こんにちは。storyIの猪俣恭子です

質問は思考を鍛えます。

質問されれば人は考えざるをえませんし、部下は上司から質問される方向にしか成長しません。
あなたは普段、部下にどのような質問をしていますか?

さて、質問にも前向きになるものと後ろ向きになるものがあります。

ここで実験してみましょう。
質問が変わることでやる気や行動にどのような影響があるかを観察します。

最初に準備してください。

「やろうやろうと思って、なかなか取り組めていないもの」を一つ選んでいただけますか?

例えば、

「本の整理をしようと思っていて、まだしていない」

「英語の勉強をしようと思っていて、まだ取り組んでいない」

「スポーツクラブに行こうと思っていて、まだ行っていない」

「企画書作成にまだ手をつけていない」

など。

ひとつ選んだら、次の質問をします。

「なぜ、できないの?」と。

忙しいから? 時間がないから? そんなに差し迫ってないから?

あれこれ理由を考えるものの、これといった明快な答えは得られず、結局「本当はやる気がないからかもしれない」と、思考の流れはとまります。

このように、本人が上手くいっていないことに対し「なぜできないの?」と質問することは、相手にしてみれば追い詰められているように感じてしまいます。

それが続くうちに、人は言い訳が上手になってしまいます。

振り返ってみましょう。

あなたは部下に「なぜ?」と質問しすぎていませんか?

もし思い当たることがあれば、部下の創造性という可能性を無意識のうちに摘んでしまっているかもしれません。

「なぜ?」の質問を使うときには、相手が安心して答えられるよう、質問する意図を伝えてあげるといいですね。

例えば、ミスをした部下にだったら、

「このミスという経験をこれからに活かすために、今の状況を一緒に振り返ろう。原因がわかれば対策も見てくるからね。
最初にあなたの考えを聞かせてほしいけど、どうしてこういう結果になったと考える?」

などのように。

次に、試すのはこの質問です。

「どうしたらできる?」

今度はどうでしょう?

「どうしたらできる?」と聞かれれば、「できる方法」に思考が向きませんか?

「やる日時を決めたらできそう」

「まず申し込むことからやってみよう」

「一人でやるよりも友人と一緒にやってみよう」

などのように。

「なぜできないの?」の質問に比べ、アイディアがたくさん浮かんでくるはずです。

それにそのアイディアを試してみたくなるでしょう。

「なぜできないの?」と質問されるよりも、ずっと前向きな思考状態になります。

続いて次の質問の場合はどうでしょう。

「それをすることは、あなたにとってどんないいことがあるの?」

この質問は今までの二つの質問に比べて、答えるまで時間がかかります。

私は友人にこの質問をしたことがあります。
彼は健康診断を受けなくてはと思いながら先延ばしにしていました。

「健康診断を受けることは、あなたにとってどんないいことがあるの?」

そう質問すると、彼は「自分が健康であるために必要だから」と答えます。

当然のことです。

さらに聞きました。

「自分が健康であることが、どうしてあなたにとって大切なの?」
と。

彼はしばらく考えこみました。

その間、一分近くあったと思います。
その後、彼は今までと打って変わって真剣な眼差しで私に言いました。

「去年、息子が生まれたんだけど、息子の前ではいつまでも元気な父親でいたい」

まっすぐ私の目を捉えながら話す彼の様子は、それが本気であることを表現していました。
これこそが彼が健康診断を受ける真の目的なのです。

翌週、彼は人間ドックを申し込みました。
停滞していた行動が促されたのです。

人は意味を求める傾向があります。

「それをすることの目的は何? 何のためなの?」

理由がわかると迷いがふっきれます。

会社のため? 職場のため? 上司のため? お客さまのため?
何よりも「自分のため」にそのことはどうつながるのかを、部下に話してもらいましょう。

人は「自分はこうしたい、こう考えている、こうなりたい」を話せば話すほど、モチベシーョンは高くなり、自ずと行動するようになりますから。