こんにちは。storyIの猪俣恭子です。

「わからない」ことを「わからない」と言うには勇気がいります。

相手ががっかりしたらどうしよう?
「こんなことも知らないの?」と軽蔑されたらどうしよう?

だからこそそのリスクを超えて、そう率直に言える人に、人は誠実さと正直さを感じます。

あなたは、わからないことを「わからない」と正直に言えますか?

「Yes」と言うことにためらうのであれば、何があなたをそうさせているのでしょうか?

銀行に勤めていた時、Yさんという上司がいました。

当時Yさんは転勤してきたばかり。
事務知識は女子社員のほうが知っています。

私たちはYさんがのちのち判断しやすいように仕事内容を詳しく伝えるのですが、あとになって「あれ? Yさんはわかっていなかったのかな?」ということがたびたび起こりました。

わかっていれば到底、起きないようなミスがYさんにはあまりにも多かったのです。
そのたびに私たちはYさんがしたことのフォローに追われ、予定外の仕事が増えるばかり。

最初は好印象だったYさんにだんだん不満が募ってきました。

「わからないならわからないと言ってくれればいいのに。
なぜ知ったかぶりをするんだろう? プライドが高いの?
もしかしたら女性を見下しているところがあったりして? 
いや、理解力が実は低かったりして・・・?!」

私たちは少しずつYさんが信頼できなくなり、そのうち距離を置くようになりました。

これは何もYさんに限ってのことではありません。

本当はわかっていないのに、わかったふりをして会話を続けることは誰しも思い当たることがあるでしょう。

「わからない」環境にいると、人は不安を感じ、ストレスレベルが上がります。

異動や転職など職場環境が変わるのはもちろんのこと、昇格や係替えなど立場や業務内容が変わるときは、「わからない」環境に飛び込んでいくようなものです。

そこでは自分自身で判断できることが少なく、見通しも充分に立てられません。
経験不足も手伝って、適切な判断がその場ですぐにできないことにも歯がゆく感じます。

やがて「優秀ではない上司」「管理職にふさわしくない」と周りから思われるのではないかと不安が広がります。

それゆえ「わからない」のに「わかったふり」をしてしまう負のスパイラルに陥ってしまいます。

しかし常に完璧な人である必要はありません。
わからないことは「わかりません」と言っていいのです。

分からないことがあった時は、臆せずに聞いて教えてもらいましょう。

「これはどうやるの?」

「以前はどうやっていたの?」

「注意したほうがよいところはどの部分?」

そして、最後に「教えてくれてありがとう」を忘れずに。

部下には、「あなたの役に立ちたい」「自分にできることがあればサポートしたい」という気持ちもあります。

あなたから質問されて答えることは、「貢献欲求」が満たされることにもなり、自己効力感が高くなることにもつながります。
自分はこの職場で必要とされている存在なのだと、意欲も上がるでしょう。

だからといって、「わからない」状態にいつまでも甘んじることはないように。

あなたの学び方、知識の備え方、実践の仕方、そのプロセスを部下はよく観察していますから。

人は完璧ではありません。
完璧である必要もありません。

部下が求めているのは、あなたが正直な人であることです。

あなたから「誠実さ」を感じたいと思っています。