こんにちは。storyIの猪俣恭子です。

「あの人とはどうもあわない。一緒にいて仕事がしづらい」

実際は何があわないのでしょう?
考え方?
価値観?
働く目的?
仕事をする時のスピード感?

しかし、それって本当にあわないのでしょうか?

いいえ、そんなことはありません。

お互いに共通しているものが見つかれば、一気に「違い」を超えてつながれる可能性は大いにあります。

ある高校のコミュニケーションスキルトレーニングで、先生のサポートで参加した時のことです。

私はSさんという女子高生とペアを組み、初対面の彼女とエクササイズに取りくむことになりました。
しかし、彼女から伝わってくるのは、私への「品定め」

「この大人、誰?
どんな人?
どれくらい信頼できる人・・・・?」

そうした戸惑いがSさんの全身から感じられ、いたたまれない気持ちになってきました。

居心地が悪いなか、最初のエクサイズが始まりました。
テーマは「二つにひとつ。あなたはどちらを選ぶ?」というもの。

配布資料を見ながら、お互いに自分が選ぶほうを読み上げます。

例えば「好きな動物はどっち?」の質問に私は「犬」、彼女は「猫」。
「好きな季節はどっち」には、私は「夏」、彼女は「冬」。

お互いの好みはことごとく分かれ、二人の間にしらけた雰囲気が漂い、居心地がますます悪くなってきました。

それでもエクササイズはおかまいなしに進みます。

お互いのことをインタビューしあううちに「Sさんは読書好きで図書館にいる時間が好き」ということがわかりました。

もうだめもとで「どんな本が好きなの?」と聞くと「えー、言ってもわからないかも・・・。司馬遼太郎とか池波正太郎とか・・・」と小さな声で言います。

さすがにその二人の作家は知っています。

ここを逃すとSさんとは最後まで冷ややかな関係で終わってしまう!
これがSさんといい感じになれるラストチャンスかも!

「へー。私も司馬遼太郎とか池波正太郎、好きだよ。いいよね。もしかして歴史が好きなの?」

「好きです」(言ってもわからないだろうなという声のトーン)

「そうなの。私も好きだよ」

「ほんとうですか?」(この人、適当に話を合わせているんじゃないのという疑いの視線)

「ほんとだってば。だって大学は史学科だったんだよ。それも国史学専攻。
だから歴史ものは好きだし、一番好きなドラマは大河ドラマだもん」

「ほんとですか?!(声が大きくなり、言葉に力がはいってくる)
私、史学科に入りたいんです。どこの大学だったんですか?
将来は博物館や美術館の学芸員になりたいんです」

「そうなんだ。私も学芸員の資格をとったよ。私は中央大学だったけど、M大学を目指してみれば?」

「M大学ですか?
いいなと思いますけど、偏差値が高くて・・・」

それまで俯き加減だった彼女の顔が上がり、目はキラキラと輝いています。
二人の間に流れる空気が、一気に軽やかに熱くなってきました。

急に会話の量が増えたのですからそうなって当然です。
お互いに共通しているものがあるとわかった瞬間にこの変わりよう。

それまでの二人の関係は「あなた」と「私」という一対一の関係でした。

それが今や「私たち」という、まるで昔からの仲間のような感覚です。

トレーニングが終わり教室を出ようとした時、驚いたことに彼女が走り寄ってきました。
史学科の話をもっと聞かせてくださいと。

共通点の持つ力は、すごい。

そもそもコミュニケーションの語源はラテン語の「communis(コミュニス)」「共通のものを持つ」という意味があります。

ということは、コミュニケーションをとるとは、相手と自分との共通点を探すプロセスともいえます。

「この人とは合わないな」
そう苦手意識を感じる相手ほど、お互いに共通しているものを探してみましょう。

私とSさんのように。

決してあきらめずに。
好きなものでも、興味のあることでも、今までに行ったことがある場所でもなんでもいいのです。

あなたは、今日、部下と共通点を見つけるためにどんな質問をしますか?