こんにちは。storyIの猪俣恭子です。

人は、相手からどう思われているかを気にします。

相手からよく思われているのか、そうでないのか?

よく思われていれば、自分の存在価値を実感できます。
今の自分にOKをだせ、発言に自信がもてます。
チャレンジするためのエネルギーもわきます。

反対に、よく思われていないかもと思った途端、不安にかられます。

自分の居場所はなくなってしまうかもと、落ち着かなくなります。
発言の際は周囲の顔色をうかがうようになり、チャレンジに尻込みするようにもなっていくでしょう。

部下にとって上司が自分をどう思っているかは死活問題です。
自分がこの組織で生きていけるかどうかの手綱は、自分を評価する上司が握っているのですから。

だから、ここに安心感を与えなければ、組織と個人のパフォーマンスを上げることはかないません。

このことに関し、『幸福優位7つの法則』(ショーン・エイカー著)の本に、大変興味深いことが書いてありました。

リーダーがメンバーの発言にまったく関心がなく、メンバーがどんな状態にあるか気にしないと思われている場合、そのチームメンバーの40%以上が職場に強い不満を感じ、仕事に熱意が持てず、仕事に何らかの実害をもたらす可能性があります。

逆にリーダーがメンバーの強みに意識を向けている人だと思われている場合、そのチームで職場に不満を持つ人の割合は、全体の1%まで下がることがわかっています。

「部下の強みを仕事に活かす」ところまでいかずとも、「上司は私の強みに意識を向けてくれる人だ」と部下が思えるだけで、こんなに効果が表れることにびっくりしました。

そういえば、以前これに近いことを経験しました。それは、就職支援のプロジェクトでリーダーを任された、かれこれ10年近く前のことです。

メンバーの一人Aさんと面談中、これから一緒に頑張ろうと声をかけあったその時です。

Aさんが突然言いました。

「私、猪俣さんのことを一番信頼しています」

「ありがとう。どうしてそう思うの?」

「だって、猪俣さんは私たちの強みを見てくれていますよね」

強み?
ああ、もしかしてこの前の会議で私が話したこと?

そう、こんなことを話したのでした。

「一人ひとりには強みがあります。その強みは人によって違います。

私は、皆さんの強みを伸ばして発揮できるようにしていきたいです。

プロジェクトが終わった時は、目標達成できたことをみんなで喜びあいましょう」

「もしかしてそのこと?」とAさんに確認すると、「そうです」と彼女は目を輝かせながら頷きました。

確かにそう言いましたが、実際にできていたわけではありません。

しかしAさんはそれを聞いただけで嬉しくなり、その気持ちを私に伝えたくなるくらいのことが起きたのです。
その反応に心底驚きました。

そのプロジェクトは、おかげさまで目標を達成できました。
しかも、歴代トップ3に入るくらいの成績をおさめることができたのです。

Aさんは、他の方たちから「Aさんが達成したあの結果は、もう奇跡的」と言われるほどの活躍ぶりを見せてくれました。

本人自らの頑張りはもちろんありますが、その頑張りにスイッチを入れたのは、「リーダーの猪俣さんは私の強みを見てくれている」という安心感だったのではないかと思います。

職場の生産性をどうしたら上げられるかと、手段、方法、仕組み、事例を思案する前にできることがあります。
一番すべきことは、職場を構成する一人ひとりのどこを私は見ているだろうか、という振り返りです。

改善すべきところを見ている?
不足しているところを見ている?
できていないところを見ている?
できているところを見ている?

ここに是非「相手の強み」という視点も加えてください。

「相手の強みに意識を向ける」ことは、いつからでもどこからでもできて、とてもシンプルなのに、最も効果的な部下のマネジメントです。