こんにちは。storyIの猪俣恭子です。

部下を「叱る」「怒る」ことは、上司にとっていつも悩ましい問題です。

一般的には、怒らずに叱ることの意義をよく聞きますが、場合によっては「怒る」ことで部下にポジティブな影響を残せることもあります。

印刷会社で働いていた時のことです。

ある重要な仕事をIさんにお願いし、間違いなくスムーズに進められるように繰り返し手順を説明しました。

しかし、かえって慎重になりすぎたのか、Iさんはミスしてしまったのです。
それを知った時、「こうならないように、とあれだけ時間をとって説明をしたのに」と、心底、腹が立ちました。

「何やっているの!」

「すみません」と謝るIさんを横目に、あからさまに不機嫌な態度で社員に指示を出し、その場をしのぎました。

ところが、その日の夜になって思い返しました。

「Iさんだって、わざとミスしたわけではない。
それなのにこんな結果になってしまって、申し訳ない気持ちでとても落ち込んでいたに違いない。

もっとIさんの気持ちをわかってあげたらよかったのに。
あんな怒り方をしてしまって・・・。

明日、謝ろう。」

翌日出社すると、Iさんは既に仕事に取り組んでいました。
「Iさん」と声をかけると、Iさんは足早に私のほうに近づいてきました。

そして、はっきりこう言ったのです。

「昨日は、申し訳ありませんでした。
せっかく猪俣さんに信頼してもらって、やらせていただいた仕事なのに。
これから気を付けます。」

と。

「猪俣さんに信頼してもらったのに」という言葉が、嬉しく心に響いたのを今でも覚えています。

そういう態度をとってくれたIさんに感謝しました。

「上手な叱り方を教えてください」
「どうしたら怒らないで済むのか、教えてください」

このような相談を受けるたびに、私は決まってこう答えます。

あなたと部下との間で信頼関係ができていれば、「叱って」も「怒って」も、それで関係がこじれることはありません。
モチベーションが下がることもありません。

部下があなたを信頼していれば、たとえどんな言い方になっても、部下はポジティブに受けとめられるはずです。

そして、受けとめた内容を自分の成長と改善に向けて、自ら活かしていくことでしょう。

Iさんのように。

今、部下はあなたをどれくらい信頼しているでしょうか?
あなたが部下を信頼しているだけ、部下もあなたを信頼します。

今、あなたは部下をどれくらい信頼していますか?

叱ろうが、怒ろうが、ひるまないように。
部下に届くのは、あなたの誠実さだけですから。