こんにちは。storyIの猪俣恭子です。

人は周囲からの期待に応えることで、自分の存在や価値を実感でき、自信がもてるようになります。
ですから、あなたが部下にどのような期待をしているかは、思っている以上に結果に影響を及ぼします。

あなたは、部下にどのような期待をしているでしょうか?

これに関して身に染みたことがありました。

印刷会社で働いていた頃、当時の私は採用も担当していました。
優れたデザイナーを採用したいと思い、直接に専門学校の就職相談室へかけあったことがあります。

対応された先生が推薦した学生がH君だったのですが、迷いました。

何故なら、その学生はデッサンの成績が低かったからです。
私のその迷いを打ち消すかのように、先生は確信をもって言いました。

「H君はクラスの中でも目立つほうではありませんが、存在感があります。クラスで揉め事があると、彼がまるく収めてくれます。
性格もとても真面目ですし、こつこつあきらめずに取り組む誠実さもあります。
御社の信頼ある社風に合っていると思います。遅咲きタイプですが、5年後には必ずや御社のリーダーとして活躍できる人材です。」

その先生は20代半ばくらいの若さでしたが、迫力が感じられました。

社長と相談し、先生がここまで言うならばとH君を採用することにしました。

しかし感じていた懸念は事実となり、H君はデザイナーとしてなかなか結果が出ません。
みかねた社長が、デザイナーでない仕事のほうが向いているんじゃないかと言うことも何回もありました。

ですが、その度ごとに私はH君をかばっていました。

「もう少し、長い目で育てましょう」
「この前は、こういうことができるようになっていました」
「こういうことをしてくれて、とても助かっています」

などのように。

そうしているうちに、社長のH君への仕事の指示の仕方が、目に見えて変わってきました。

「これをやっておいて」だけでなく、進める上で参考になりそうなデータやデザイン案も併せてH君に渡したり、デザインのコツを教えたり、励ましたり、時にはお客さまのところに一緒に連れて行ったり・・・。

社長がそうなれば、周りの社員もそれに倣ってきます。
そのような環境の中で、H君は確実にデザインチームのリーダーに育ってきました。

それも5年も待たず、3年で。

H君は、私たちが「こうなるだろう」という期待に見事に応えたのです。

何がこの結果を生み出したかというと、やはりあの先生の一言だったと思わざるを得ません。

「彼は遅咲きタイプですが、5年後には必ず御社のリーダーとして活躍できる人材です」

という、先生のH君に対する強い期待。
それに私が影響を受け、その私から会社の人たちが影響を受けた・・・。

あなたは部下にどのような期待をしているでしょうか。

「彼は細かい作業が苦手だ。手際が悪い。
ここの仕事はそう長く続かないだろう。」

といったネガティブな期待をかけていますか?

それとも

「彼は周りの人の相談によくのっている。最近、職場の雰囲気も明るくなった。
きっと営業担当者として活躍するだろう。」

とポジティブな期待を持っているでしょうか?

それによって、あなたの内側に満たされる「気持ち」まで違ってきます。

前者には「あきらめ」を、後者には「希望」を感じるのではないでしょうか。

人は無意識に相手の期待に応える、という心理的な傾向があります。

あなたの部下への期待は、部下の成長の障害になっているものでしょうか。

それとも、力強い促しになっているでしょうか。