こんにちは。storyIの猪俣恭子です。

先週一週間、「この人の強みは何だろう?」と自問自答しながら周りの人を観察してみました。

気づいたことがあります。

それは、「なんでこの人はこういう態度をとるんだろう?」と、ついぞ批評家モードになってしまう時に、「ここにこの人の強みが潜んでいるとしたら?」と自分に問いかけることで、その状況を俯瞰できるようになったことです。

たかだか一週間のことですが、イラっときたり、モヤっとくる場面は随分少なくなりました。

「相手の強みを意識する」ことは、私にとって「反応」ではなく「対応」するための「間」をうみだすことに役立っているようです。

これからも引き続きトライしてみます。

さて、今日のテーマは、「問題解決に強みを使う」ことです。

もう10年以上前のことですが、ハウスメーカーで設計の仕事をしている友人のSさんから相談を受けたことがあります。

Sさんは部下のTさんの指導で長いこと悩んでいました。

「T君は真面目で口数も少ないし、人前で話すのが苦手。
設計士の仕事は、お客さんの話を聞き、こちらの意図を明確に伝えるというコミュニケーション能力がとても必要なんだ。
それで何度もコミュニケーションのとり方を改善するように伝えているけど、一向に改善されない。」

半ばあきらめているようなSさんを見て、私は次の話をしてみました。
それは、ありがちな上司から部下への指導プロセスについてです。

例えば、お客さまや他部署からクレームがあったとします。

その時の部下への指導プロセスは、おおよそ次のようになります。

  1. クレームがある
  2. 原因を調べる
  3. 部下の足りない要素が見えてくる
  4. それを改善するように伝える

部下にしてみれば、「自分の足りない要素」を指摘されるわけです。

上司の指示や指導をいったん聞くものの、面白くないですから行動が促されず、結局やらずじまいになりがちです。
そうすると、また指摘されるという悪循環が起きてしまいます。

では、この悪循環から抜け出すためには、どのように本人の「強みを使う」とよいでしょうか?

この状況を違う視点から見てみます。

  1.クレームがくる。

  2.その原因を調べる。

ここまでは一緒です。

しかし、それ以降のプロセスを変えてみます。

  3.部下の得意な要素を使ってどのように解決できるかを考える。

  4.部下と話をして、解決策を一緒に決める。

つまり、クレームなどの場面を『強みを使う』ためのチャンスに変えてしまうのです。

この一連の話をSさんにしてみた後、Tさんの指導に活用できる可能性はないかをSさんと一緒に考えてみました。

「もしTさんの得意な部分で、この問題を解決するとしたらどんな方法がとれそう?」

「彼は絵を描いたり、何かを作るのが得意なんだよ。多分、デザインすることが好きなんだと思う」

「そのことは、今回の問題にどのように活かせるかな?」

「そうだなあ。お客さまとの打ち合わせで、間取りのイメージを明確に持ってもらうために内観パースを描いたり、住宅模型を作ることができるかもしれない。
うーん、なるほど。
お客さまにわかりやすく話をすることだけが解決策じゃないな。早速T君と話してみるよ」

その後、SさんはTさんにこうもちかけたそうです。

「効率よく説明できるだけがコミュニケーション能力じゃない。
Tさんの得意な内観パースや住宅模型をつくって、お客さんに説明してみたらどうだろう?」

と。

すると驚いたことに、今までアドバイスに耳をかさなかったTさんが、お客さまの打ち合わせ用に内観パースを描き、小さな住宅模型を作り始めたそうです。

自分で描いたパースや模型ですから、お客さまへの説明にも熱が入ります。

このようにしてTさんは、パースや模型というツールを使いながら、Tさんスタイルのコミュニケーション能力を少しずつ高めていったそうです。

Sさんはこの体験からの感想をこう話してくれました。

「今まで、Tさんにコミュニケーション能力を高めろ、高めろと言ってきたのは何だったんだろう?
これからは、相手の足りないところだけを見るのではなく、相手の強みを使って問題解決をしていくことを積極的にしていきたい。
そうしたほうが、いいチームがつくれそうだ」

強みはリソースでありツール。

リソースもツールも使わなければさび付くばかり。

何か解決したい問題に向きあう時に、「強み」を使ってどう解決できるかを考えるプロセスも、個人のパフォーマンスアップに大いにつながりそうです。