拙著『女性のためのリーダーシップ術』の中の
『あなたってどんな人?』では、
コミュニケーションの4つのタイプについて書きました。

コンセプトは、
  自分がされて嬉しいことは、
  相手もそうだとは限らない。
  その視点を持っているだけで、
  部下の個性を活かすことに一歩も二歩も近づく・・・
  相手がどのような考え方や行動パターンなのか、
  よくよく観察しよう、
というものです。

本書ではそうやって締めくくりました。
ですが、最初の頃はそのあと、続きがありました。
校正をしていくなかで、
全体のバランスを考慮してカットした内容を
今日は紹介したいと思います。

どんな内容だったかというと、
「私はこんな人でね」と、
自分のことをあけっぴろげに
相手に伝えちゃいましょうよ、
というものでした。

話は印刷会社で働いていた時のことです。
コミュニケーションの4つのタイプ、
これはとても面白いと、
会社の人たちに、やってもらったことがありました。

ああ、やっぱりIさんはサポータータイプ、
Aさんはアナライザーか…、
えっ、Sさんはコントローラー! 道理で…。
のように、全員でワイワイとそれはそれは盛り上がりました。

「私はね、プロモーターの傾向が高いんだ。
  『さすが』っていう褒め言葉に弱いんだよね」

それを聞いた時の部下たちの様子が面白かった!
「えっ!」
一斉に私のほうをちらっと見て、
「プロモーター?」とつぶやきながら、
再び資料に目を落とし、食い入るように読み始めたのです。
ということは、
部下のほうも「私がどんな人なのか」ということに
とても興味があるということなのですね。

10分くらい経った頃でしょうか。
パソコンルームの柱の影から、
こそこそとささやく声が聞こえてきました。
なんだろう?
耳をそばだててみると…。

「猪俣さん、すごーい。さすがー」

それは、IさんとAさんの声。
ははーん。なるほど。
「プロモーターの傾向が高いんだ」って言ったから、
私を褒める練習をしている様子。

「何しているの?」
その時の二人の焦りようといったら!(笑)
「あっ! いえ、その…。なんでもありません!」
資料をばたばたと背中に隠し、大慌て。
思わず大声で笑ってしまいました。

それからは何かにつけ、
「猪俣さん、さすがですね。」
「猪俣さん、すごいですね。」
と会話のはしばしで言われていたような…。
そのたびに「まんざらでもない」と機嫌がよくなっていたような…。
完全に手のひらの上で踊らされていましたね。(笑)

しかし、部下から話しかけられる量は、
それをきっかけに、確実に増えました。
今までよりも、リラックスして私と話しているような、
そんな感じさえ受けました。

プロモーター? コントローラー?
アナライザー? サポーター?

コミュニケーションの4つのタイプ。
いいツールです。
職場でのコミュニケーションの量がぐっと増える、
お互いに距離が縮まる、
今までよりもお互いにもっと親近感がわく、
そんなきっかけが生まれるツールです。

部下から尊敬される、一目おかれる、信頼される、
自分がそういう上司であることは、
大切なことです。
でも、部下からちょいと「からかわれる」、
そんな時もあってもいいんじゃないでしょうか。

「近寄りがたい」よりも、
「手を伸ばせばいつでも届く」。
そんな距離感がお互いに流れている時に、
仕事のパフォーマンスもぐっと上がるのだと思います。

「この人はどんな人だろう?」
そうやって、じっと部下を観察するのも一興。
「私はこんなところがあってね」と、
オープンにあけっぴろげに語ってしまうのも、
一興。
部下もあなたがどんな人なのか、
知りたがっているのですから。

追記/ 
私はもちろんプロモーターの傾向は高いですが、
実は、僅差ながら一番高いのはコントローラーなのです。
ただ、サポーターの傾向が高い部下にその真実を伝えると、
かえって怯えてしまうのではないかと思い、
プロモーターと口がすべったのでした。(苦笑)
嘘も方便…。