(前回からの続きです)

人は、自己認識が低いと、
不安から相手をコントロールしようとすることがあります。

その後に続く文章に、長年探していた答えがありました。

 たとえば、部下に対して威圧的になりがちな上司は、
 「自分は上司として認められているのだろうか?」
 「上司としてふさわしい行動をとっているのだろうか」といった不安から、
 部下をコントロールし、自分に従わせることで、
 その不安を解消しようとしていると考えられます。
 相手に自分が望むような答えを求める、
 自分が相手にとって重要な存在だということを認識させる、
 といった行為は、不安なときに起こります。
 そして、何よりもやっかいなのは、
 自己認識が低いと、
 自分がそうしていることすら認識できない、ということなのです。

はっとして、読んだそばから自分におきかえてみました。
私はリーダーとして社員から認められているのだろうか?
その不安を解消しようと威圧的になっているのだろうか?
果たして社員はどのように感じているのだろう。
いや、社員はきっと私のことわかってくれているはず。
でも、本当に?

ある日、勇気をだして若手スタッフの一人に尋ねてみました。

「私、この会社をよくしていきたいと思っているんだけど、
 みんなにとって、よきリーダーでありたいと思っているんだよね。
 それでね、○○さんを見こんでなんだけど、
 私のリーダーシップっていうか、
 コミュニケーションのとり方ってどう思う?
 思ったことを教えて。
 改善していくから」

きっと「猪俣さんのやっていることは正しいですよ。
猪俣さんについていきますよ」と言ってくれるに違いない。
そう期待しつつ、しかし彼女の口からでてきた言葉は・・・。

「じゃあ、言っていいですか? 
 猪俣さんって、機嫌のいいときと悪いときで態度が違います。
 それに、愚痴が多いです。
 愚痴言っている人に、ついていきたくありません」

あまりのことに、心臓の鼓動が一気に速くなりました。
心臓が口から飛びでるかと思うくらいでした。
言い訳したくなりましたが、
コミュニケーションは相手に伝わったことが全て。
相手にとっては、これが事実。
震える声でやっとの思いで、
「言ってくれてありがとう。」と絞り出しました。

こんなこと言われる自分のままでいいのだろうか?
いや、いいわけがない。
ではどうしたい?
この状況、自分が変わらなければ何も変わりません。
それがコーチングを学ぼうと思ったきっかけでした。
今からもう15年も前のことです。
あの当時、私はこう思っていました。
私は、相手を勇気付けられる人でありたい。
相手のやる気を引き出せる人でありたい。
ならば、「今」が自分が変われる最後のチャンスかもしれないと。
ここで、本当の意味で人を育てられる人になれなければ、
永遠に私はそういう人になれないだろう、と直感で思いました。

こうして藁をもつかむ思いでコーチングを学び、
現場のコミュニケーションに活用していったのです。
それからは、紆余曲折ありましたが、
お客様から
「猪俣さんのところはどうしてそんなに若手が伸びるの?」
「どうやって育てているの?」
と、訊かれるようになりました。
社員からは「猪俣さんについていきますから」と、
それは嬉しい言葉をもらえるようになりました。
社長からも「ようやくリーダーらしくなってきた」と、
お墨付きがもらえるまでになりました。

2004年のもがいていた頃の私は、
不安な気持ちでいっぱいでした。
後継者の立場ゆえ、社員から認められたい気持ちで一杯だったのです。
しかし、一方で認められていないこともわかっていました。
だから、会社ではイライラしていましたし、
口調もかなりきつかったと思います。
自分の不安をコントロールできなかったのです。

そのことに気づけたこと、
そして本当のことを正直に教えてくれたあの若手スタッフのおかげで、
今、こうして人材育成の仕事ができるようにまでなっています。

上手くいかなかった時は、
いつも「相手が変わればいいのに」ばかり思っていました。
自分の思うような言動をしない相手に、
不満を感じてばかりいました。
しかし、自分の考え方や行動を変えることに挑んだ時に、
一番私が欲しいものが手に入りました。

何かに対して変わってほしいと願う時は、
実は、自分の何かを変えることを促されているサイン。
一気に状況がよくなることはないでしょうが、
ひとつひとつが関連しあいながら、
確実に状況はよくなります。
そのような体験をこれからも綴っていきます。

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