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【エピソード4】印刷会社現場奮闘時代

~自分が変わるしかない~

退職後、地方銀行協会主催のインストラクター養成講座でご一緒した先生から連絡をいただきました。
起業するので一緒にやらないか、とのお誘いだったのです。
是が非でも一緒にやりたかった!

でも、でも・・・! 丁寧にお断りしました。

私の実家は印刷会社を営む自営業。父親は三代目。
後継者として会社を手伝おうと思ったからです。
年老いた父が営業やら工程管理やら納品までをやっている、その頑張っている姿を目の当たりにし、ほっとけなくなったのです。

これなしでは仕事ができない大切な道具。
紙の厚さを測るマイクロメーターと文字サイズを測るフィルム

当時、Macの登場により印刷業界は急速なデジタル化の最中にありました。
ちょうど写植オペレーターの方が退職することもあり、私がDTPオペレーターになって穴埋めすることにしました。

しかし、銀行員時代にワープロしか使ったことがないのです。
それがMacで版下制作、編集作業・・・と全く畑違いの仕事。
取引先のメーカーの営業も「猪俣さんじゃ無理じゃないですか」とアドバイスをするほど。
が、無理でもやるしかありません。

PCやアプリケーションソフトの操作や印刷の知識や技術の勉強づくめの日々。
繰り返し繰り返しマニュアルを読みこみました。
エラーやトラブルが発生すれば、モリサワのサポートセンターにすぐに電話をかけ、対処法を教えてもらいました。
最終新幹線ぎりぎりまで残業することも続きました。

ですが、後継者としてのプライドがあったのです。
品質の高いものを提供したい、うちの会社にお願いすれば間違いなくやってくれると信頼される印刷会社になりたい。
若手社員にDTPオペレーターを任せ、次第に営業として外にでるようにもなりました。

ただ、どうしても銀行で働いていたときを基準にして周りを見てしまう。
お客様の応対や仕事の進め方、職場の整理整頓ひとつとっても、目にあまるところが多くありました。すると、自ずと口うるさくなるわけです。

ある日、若手社員に言われました。

「猪俣さんの言っていることは正しいです。でも、もっと私たちのことをわかってくれてもいいじゃないですか。」

ショックでした。

しかし、若手社員からみれば事実なのです。
自分でも、なんとなくわかっていました。一人でからまわりしているな、と。

自分の何かを変えなければ、ずっとこのまま。
リーダーシップや人をどう育てるかの理論は知っている。
けれども、実際に現場でできているかというと、この有り様。
本当の意味で人を育てられる人になりたい、相手のモチベーションを上げられる人でありたい。
そう思ってコーチトレーニングプログラム(CTP)を申し込んだのです。

CTPを受講して、一番はっとしたのは、「答えは相手の内側にある」という言葉でした。

今までは、全て私が問題解決をしていました。
そういう人が尊敬されると思っていたからです。

しかし、いつでもそれがいいわけではない。相手がのびのびと考えられるよう、気づきがおきるよう、何をすればいいのか自分で見つけられるように「聞く」「質問する」「承認する」「フィードバックする」・・・。
学んだことを必死に職場で活かしました。

一年ほど経ったころでしょうか。
制作は若手に任せ、私は営業活動や現場の工程管理に専念できるようになっていました。

あるとき、若手社員に言われました。

「猪俣さんはうちの会社の要です。猪俣さんのビジョンを教えてください。私たちはそれをサポートしたいです」と。

私を避けていた年配の営業の方は、営業先での情報を共有してくれるようになりました。
愚痴ばかり言っていた現場スタッフは、トラブルが起これば自分が中心になって工場内で意見を調整してくれるようになりました。

総務担当の方は、こう言ってくれました。

「猪俣さんの負担が少しでも軽くなるように、私たちでできるところまで頑張ってやろう、って話し合っているのよ」と。

社長の父は、「最近、ようやくリーダーらしくなってきたな」と。

自分のコミュニケーションのとり方が変わると、化学反応を起こすように周囲も変わる。
それを確信した、かけがえのない体験でした。

2020-05-04T03:29:20+09:00
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