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【エピソード3】人事部研修グループ時代

~研修センターは駆け込み寺~

「おー、よく来たな」初出勤の朝、人事部研修グループ次長のKさんの第一声。

研修でお世話になった代理や先輩と並んで机に座るのは、不思議な感じでした。
研修グループは全行員から見られるポジション。

ちゃんと、しっかり、きちんとやらなきゃ。模範にならなきゃ。
そんな私の様子を見て、次長はこう言ったのです。

「福田さん、私たちは先生じゃない。受講者が手を伸ばせば届く、研修センターのお姉さんでいなさい。一線で働く行員が迷って悩んで何かあったときに、最後に福田さんに相談にのってほしいと、そう思われる人でありなさい。
研修センターは行員にとっての駆け込み寺なんだよ。私たち本部のお客様は営業店だ。営業店にとって役立つ研修は何かを常に考えなさい」

このことは、今でも私が講師をするときの大切なスタンスになっています。

さらに次長は折に触れ私に質問しました。
「福田さんはどう思うんだ? ここで何をやりたいんだ?」
営業店で働いていたときは、そのようなことを訊かれたことはありません。
だからいつもあたふたしました。
都度、IさんやMさんと同じです、と答えるわけです。

そのたびに次長は言いました。
「同じです、じゃなくて、福田さんはどう思うのかを聞いてるんだ。それがなければ、あなたがこの職場にいる意味はないよ」
私に答えがあることを信じている次長の気持ちが心に響きました。

それに応えたいと、考えに考えに考えました。
私がこの職場でやりたいことは何か。
それからゆうに一年も経った頃でしょうか。
ようやく伝えられたのです。
「女子行員がもっと自分の力を発揮したくなるような職場をつくりたい」

そのときの次長の言葉は今だに忘れられません。
「よーし、いいぞ。やれ」
素直に「よし、頑張ろう」と意欲が湧きました。

職場は、上司と部下という上下関係よりも対等な関係に。
それも次長が大切にしていたことでした。
Hondaのワイガヤ(役職や年齢、性別を越えて気軽に『ワイワイガヤガヤ』と話し合うという意味。)のような職場にしたいと。
だからこそ、私たち女子行員も伸び伸びと仕事ができました。

印象に残っているのは、女子行員パワーアップ研修です。

研修グループの女性は私含めて3人。先輩のNさんと後輩のKさん。
私たちで新しく研修を企画し、それぞれが一クラスずつを担当するというもの。
それまでは外部講師を招いての研修でしたから、画期的だったのです。
3人で分担して内容を考え、共有しあい、資料も手分けして作り、少しずつプログラムを創りあげました。
それでも時間が足りません。

女子行員は残業が認められていなかったので、帰ったふりをして、更衣室で打ち合わせを続けたことも何回もありました。
その甲斐あって研修は成功。

受講者からは、「このままでもいいやと思っていたけれども、自分も上を目指して頑張る。自分が後輩のモデルになる」、そんな感想が多く聞かれました。
はつらつとした受講者をみて、責任を果たした安堵感と充実感でいっぱいでした。
次長もよく見ているもので「3人で遅くまで打ち合わせをしていただろう。よく頑張ったな」と。

あれは本当に嬉しかったですね。

次長はその後転勤となり、代わりに赴任された次長たちは絵に描いたような管理職。
職場は従来どおりの縦割型に戻りました。
自由にアイディアが飛び交う、というよりは、ひたひたとした緊張感が漂う雰囲気になりました。
“上”が変われば“職場”はまさに変わるのです。
それを当事者として体験できたこともとてもよかったと思います。

その後結婚が決まり、県外に住むこともあって退職することにしました。
多くの上司、先輩、後輩、同期に支えられての銀行での7年間。

お給料をいただきながら、社会人としての基本、人間関係の創り方、仕事の取り組み方、チームとして仕事をしていくことの醍醐味、人としての在り方など、多くを学んだかけがえのない7年間でした。

2020-04-15T09:25:57+09:00
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