~思いは実現する。ビジョンには今を変える力がある~
職場のチームワークは随分と良くなったものの、経営は非常に厳しいものでした。
一方私は、人材育成の仕事がしたいという夢をあきらめきれず、中途半端なもんもんとした毎日を送っていました。
父に相談しても「研修の仕事で生活ができるわけない。」と相手にされず、落ち込みました。
さらに、夫の両親を相次いで見送ったこともあり、かなり気持ちが滅入っていました。
2005年。当時、Kさんというコーチをつけていました。
コーチングセッションで、彼女とこのようなやりとりがありました。
「猪俣さん、5年後にはどうなっていたいの?」
「そんな先のことなんかわかりませんよ。思い通りにならないのが人生なんです」
間髪いれず、Kさんは言いました。
「そんなことを言っていたら、なんにもできないよっ!」
正直、少しカチンとしました。ならば、とやぶれかぶれになって語ったわけです。
コミュニケーション研修の仕事をしている、コーチの資格を持っている、CTPのクラスコーチをしている、コーチとして活動している私が新聞に載っている・・・! と。
いいね、いいね、と聞いていたKさんは最後に言いました。
「印刷会社の仕事を大切にしながら、猪俣さんがやりたいこともできるようにしましょうよ」
その瞬間、さあっーっと視界が開けました。
そうなんです。
それまでは、「印刷会社の仕事を続けるか、それとも辞めるか」の二者択一しかなかったのです。
でも、第三の選択肢が実はあった!
印刷会社の仕事をしながら、やりたいこともやる、という。
研修風景。大切にしているのは、参加者との対話。5年前に語っていたビジョンは、今、現実に。
今の私がいるのは、あのときのKさんとの会話があったからこそ。
それからは、CTPで知り合った仲間と日本コーチ協会の栃木支部を立ち上げました。
地元でコーチングや研修の仕事を始めました。
起業もしました。
最初は反対していた父も、社員の方も応援してくれました。
父にいたっては、屋号を一緒に考えてくれたり、商売繁盛を願って神社でお守りを買ってきてくれたりしました。
その父も病に臥し、会社のことを最後まで心配しながら亡くなりました。
税理士の先生と相談し、およそ100年近く続いた会社を閉じました。
お客様には他の印刷会社さんを紹介し、安心くださるように配慮しました。
惜しんでくださるお客様と会社を閉める最後の最後まで手伝ってくれた社員の方に有難さを感じつつの日々でした。
そして今。
かなり遠回りしましたが、やりたいことにこうしてたどり着いています。
これだけの道のりを通ってきたことには、意味があったのでしょう。
起きていることすべてには意味があります。
今の自分にとってベストなことが起きています。
そう思えるようになったのも、Kさんのあの「5年後はどうなっていたいの?」という問いがあったからこそ。
将来に悲観的になっていた私が、ささやかながら未来を描けるようになった問い。
今していることは未来につながっている、それを教えてくれた問いでした。
どうやら、やはり「思い」というものは「実現」するようです。
ただ、本当に望んでいるのなら、ですが。
あなたは、将来、何をしていたいのでしょうか、どうありたいのでしょうか、何を持ち合わせていたいのでしょうか。
ぼんやりとしたイメージからのスタートで構いません。
あなたの物語は、他の誰でもなくあなたが描くしかない。
もちろん主人公はあなたです。
人のキャリアというのはそうやって時間をかけて出来上がっていきます。
そんな思いを大切に、コーチとして、研修講師として、あなたがあなたの物語を自信を持って描けるように、仕事を通してこれからもサポートし続けていきたいと思います。