今、新人指導者の方対象の研修を担当している。
目の前に参加者がいれば、
語るエピソードにも力が入る。
語りながら、当時の情景かさらに色濃くなる。

新人の指導者のみならず、
上の立場になって指導育成する側になれば、
誰でも次のように思うことがあるだろう。

  この人に聞けば、
  なんでも知っていると思われたい。
  頼りになる人と思われたい。

と。
上の立場に立つ者として、
尊敬される、信頼される人でありたいという願いが
そこにある。
目指す状態があるのはよいこと。
しかし、指導育成される側からすると、
完璧な人な人、
完璧であろうとする人は、
心の中で距離を感じてしまうのではないか。
それよりも、その人の弱みのような人間らしさが
ふと垣間見えた時、感じられた時に、
「よし、頑張ろう」とやる気がわいてくるものだ。

かつて私が銀行で新入行員だった頃、
指導係のMさんは、ミスパーフェクトと呼ばれているような人だった。
事務のスペシャリストであり、
職場の誰もが一目おいている女性。
私とは一回りくらいも年の差があり、
気軽になんでも相談できる関係とは遠かった。
しかも、肝心の私ときたら、まあミスが多いこと、多いこと。
銀行の仕事が向いていないというよりも、
そもそも「働く能力」が低いのではないかと、
そこまで落ち込んでいる日々だった。

さて、ある日の朝のこと。
新人の私は誰よりも出勤が早い。
掃除を終えて、仕事の準備に取り掛かる。
一方、指導係のMさんは開始時間ぎりぎりに出勤だ。
私に近づくMさんの表情が曇っている。
すわ、また何かやらかしたか!
「福田さん」
声のトーンもいつもよりも沈んでいる。
「はい」
身構えた。注意を受ける姿勢に入る。

「福田さん、銀行を辞めようなんて思ってないよね?」

え? どうしたのだろう? 突然。
本当は「辞めたい」と思っていたので、
なぜわかったのだろう? と緊張が走った。
が、それとは裏腹の返事をする。
「いえ、そんなこと、ありません」
「そう・・・。
 実は、昨日の夜、夢に福田さんがでてきてね、
 銀行を辞めたいって私に言っている夢だったの」
えー、そんな夢を見たのか。
「私、教え方がきつかったかな・・と思って。
 そうだったら、ごめんね。これから気をつけるから。
 いろいろと気にしちゃうこととかあると思うけど、
 どんな小さなことでも聞いてね」
そう私の顔を覗くMさんのなんとも困った表情、
それになんだか泣きそうな顔にも見えた。

おー、ミスパーフェクトの異名を持つMさんに
こんな一面があったとは・・・。
一気に緊張が溶けた。
Mさんに親近感をすごく感じた。
今の自分は何もできなくて当然。新人なのだから。
新人だからこそ、なんでも聞こう。
がんばろう。
そんな強い気持ちがむくむくとわいてきた。

Mさんから学んだこと。
人が心から動くのは、
上の立場にいる人の等身大であろうとする、
「正直」さと「誠実」さ。
間違ったことがあったら、それを認めて謝る「潔さ」。

一見「弱み」とも思われるような行為も、
そういう意味では、「完璧」の一部なのだ。

なんてエピソードを研修で語る。
研修の最後に「自分はこんな指導者でありたい」と宣言する時間がある。
今、私が書いたことと同様のことを宣言してくれた方がいらした。
その方は、なんとも清々しい表情をしていた。

Mさん。
初めての出会いから四半世紀。
でも、これからも私のモデル。間違いなく。

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