ポジティブ?
「積極的であるさま」と、辞書にはある。
わかるようで、抽象的な表現だ。
拡大解釈するなら、
よりよい結果をだすべく「工夫をしたところ」、
「改善したところ」「意識して行動しているところ」などを
さすだろうか。

さて、この「ポジティブ」なところを「ポジティブ」に返す、
それもただ返すだけでない。
なぜそれがポジティブと解釈したのかという、
「根拠」もセットにして、というのを、
先日意識してやってみた。
やはりこうすると、相手はよい方向にいくのだと、
あらためて実感した。

それは大学生対象に、
連続4回のプレゼンテーション講座を担当した時のことだ。
受講者は20人ほど。
しかし、どうもにもやりずらい。
というのは、
学生たちの無表情な能面のような顔を見るにつけ、
彼らたちがわかっているのか、わかっていないのか、
果たしてどこまでわかっているのかが、さっぱり掴めない。
しかも、開始時刻に間に合う学生は2割ほど。
初回で、それぞれにネームプレートを渡したが、
2回目の講座でネームプレートをつけていない学生が数名いた。
理由を聞くと「なくした」。
5チームに分けたディスカッションの時間では、
付箋を使い、それぞれのアイディアを模造紙にだしあいながら
話し合いをすすめるようにと伝えた。
その練習もした。
しかし、その通りにしているチームは2チーム。
他のチームは、自分の意見をぽつりぽつりだすだけの有り様。
まるで、雨だれのリズムのよう。
誰かが何かを話しても、
「でも、それはこれこれこういうので難しいんじゃない?」
これでは、アイディアが深まらないし、広がらない。
相手の意見に、「でも」など逆説の接続詞を返さないこと、
ということを伝えているにも関わらずだ。

その都度、修正をはかるべくアドバイスをするが、
この状況にはほとほと頭を抱えてしまった。
最終回は、ほんとうに発表ができるのだろうか。
発表の時には、学生たちの担当教授や、
他大学からも教授が参加される。
それなりに私のプレッシャーもあるのだ。

途中経過を確認すべく、
プレゼンのデータをメールで送ってもらった。
見て、驚いた。
そこそこのものができているではないか。
反応が薄く、聞いているのかいないのかわからない態度だが、
実は、よくよく咀嚼できているのだ。
しかも、送付してきた時間は午前2時過ぎ。
どんな生活をしてるかは知らないが、
期限に間に合わせるべく、コミットしてくれる姿勢は嬉しい。

これは私も気合いをいれて、
コメントを返したい。

「なかなか、いい仕上がりです。
 先日の模擬発表で、私が『使用している色の彩度が低いので、
 もっと濃い色を使ってください。特に白抜きの文字は見にくいから』と
 伝えたら、赤色を基調にしましたね。
 テーマで扱う企業のコーポレートカラーが赤なので、
 それを意識しましたか?
 そうだとしたら、とてもよいことです。
 社会でも、プレゼンする相手企業のコーポレートカラーを使うようにしますから。
 プレゼンの王道のひとつですよ」
「率直に、“いい!”と思いました。
 アイコンの使い方が上手です。
 アイコンを象徴的に使うことで、説明の理解を一気に促します。
 わかりやすさにつながります。
 また、発表が終わってからも、アイコンがイメージとして脳裏に残りますから、
 聞いている人たちにとって、印象深くなります。
 もしも、社会で営業という場でお客様にプレゼンするとしたら、
 お客様が後でコンタクトをとりたくなるようなプレゼンデータです」
「プレゼンのストーリーがシンプルで実にわかりやすいです。
 そこから、調査に手を抜いていない感じが伝わります。
 社会情勢という現状について、ちゃんとデータで提示しています。
 聴衆は、聞いていて、納得度が高く、信頼性を感じるでしょう。
 その後のプレゼンへの興味関心のアンテナがたちます。
 また、なぜ、自分たちがこのテーマを選んだのかの理由が、
 ディスカッションのプロセスを入れたことで、はっきりしています。
 テーマ選定の理由がはっきり伝われば、プレゼンはそこで8割成功しているものです」

など。
おだてるのではなく、
できていることころは、できていると伝える。
ただ「いいね」だけだったら、何が「いい」のか学生にはわからない。
「何がどういう理由でいいのか」の根拠もセットにして返す。
すると、どうだろう。
最終日の成果発表の日。
学生たちの様子が今までとなんとなく違っているように見えた。
表情が柔らかい。
柔らかい笑顔が随分見られる。
「お疲れさま。随分遅くまで頑張ったね。メールをありがとうね」
それぞれのチームに声をかけると、
「間に合ってよかったです」「色の件は工夫したんです」など、
ようやく最終日に会話らしい会話を返してくれるようになった。
それまでは「いや、別に・・」くらいだったのに。

発表に対しての聴衆からの評価は、
異なる視点からの検証の必要性も指摘されながらも、
短期間でこれだけの話し合いと結論を導いたことに対して、
ほめていただいた。
それを聞いて、心底ほっとした。

一連のこれらから学んだことがある。
相手がこれといった反応を見せなくても、
わらわらと右往左往しないこと。
相手の態度に「なんだ、それ」と感じることがあっても、
いちいち反応しないこと。
相手が自分と世代が違う人たちの場合は、特にそうだ。
自分より年下でも、年上であっても。

今振り返れば、
彼ら彼女らがディスカッションしている時、
「できていること」は、何かしらあったはずだ。
そういう聞き方いいね、とか、
そういうアイディアは斬新でいいね、どうやって生まれたの? とか、
そういう意見の収拾の仕方はいいね、それをこれからも続けてね、など。

本当のことをいえば、
私から学生たちの間に入っていくのが、少々こわかったのだ。
私がその場にいないほうが、
話し合いがしやすいからと思うものの、
それを理由に自分から距離をとっていたのだと思う。

終われば、上手くいったところもあれば、
次に向けての課題材料もでてくる。

それでも、やはり、相手の成長に関わる立場にいるのでであれば、
タイトルに書いたとおりだ。
相手の
 ポジティブなところを
 ポジティブに返す。
 なぜそう思ったのかの
 根拠もセットにして。
これを常にしようと意識し続ければ、
いつでも、どこでも、誰に対しても、どんな場であっても、
その場にいる人たち全員でよいチームとなり、
一人ひとりの力は伸びやかに発揮できるようになる。

次回の時こそ!

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