(前回からの続き。facebook「講志塾storyI」から転載)
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★自己紹介シーン4~印刷会社勤務時代
   ~またもやフィードバックを受ける、ほっとする、決意する

会社の誰もいないパソコンルームでのこと。
若手社員のIさんが「猪俣さん」と声をかけてきました。
Iさんは専門学校卒の22歳。
そのIさん、私になんて質問したと思います?
「猪俣さんのビジョンは何ですか?」
って訊くんですよ。
びっくりしました。

でも、皆さん、そこで私はまたひとつ学びました。
部下、後輩は、上司、先輩がどんなビジョンを持っていて、
この会社で何がしたいと思っているのか、知りたいと思っているということを。
そして、上司や先輩のビジョンが実現できるよう、
役に立ちたいと思っているんです。
(※ だから、私たちはビジョンを持つ必要性がある、ということを説いています)

しかし、私はその時に自分が何がしたいのか、
なんてビジョンがあまりなかったのです。
せっくこうしてIさんが訊いてきてくれているのに。
恥ずかしかったです。惨めにも感じました。
それで正直に答えたんです。
「ごめん、今、はっきりしたビジョンがない」と。
(※ 自分がわからない、できない時は、率直に謝る。
 それが上司・先輩として大切なスタンスであることを身をもって伝えます。
 だって、部下や後輩に謝るのは、ちょっとリスクを感じますものね)

「でも、もう少しではっきりできると思う。
 はっきりしたら、聞いてくれるかな」
Iさんは静かに私の話を聞いていました。彼はこう言いました。
「わかりました。猪俣さんはこの会社の要の存在です。
 だから、猪俣さんのビジョンがはっきりしたら、教えてください。
 私たちはそれをサポートしたいと思います」
と。
(※ コーチングを学び始めてから、周りのとの関係がどのように変わったのか、その成果をエピソードとともに参加者に見せます。)

こんなことを言ってくれるIさんが素晴らしいと思いました。
有り難いと感謝しました。
とても嬉しかったです。
ようやく私も世の中のリーダーと言われる人たちと同じラインに立てたのかな、と思いました。
しかし、それで安心はしなかったです。

だって、コミュニケーションや人間関係って、“なまもの”じゃないですか。
今はいい関係でも、10分後にはこじれてしまうかもしれない。
でも、人間関係は、いつでもどこからでもやり直すことができます。
そう信じている人が、周りの人といい関係をつくり続けられる人なんです。
(※ まず、講師としての私が謙虚な姿勢を見せること。
 でないと、ただの自慢話になってしまいます。
 また、人間関係って一度こじれたら“もうだめだ!
 永遠に修復できない”と思っている方も多い。
 そう思っていると、相手とのコミュニケーションが
 おっかなびっくりになってしまう。
 それだと苦しい。やり直すたびに、より強固な関係になっていくもの。
 そういう希望を感じてもらいます。)

今日、私がこの研修で用意したのは、・・・(続く)

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【解説】
次回は、この研修ができた背景や、
受講者の皆さんがどのようなスタンスで参加いただきたいかを語っていきます。
「体験を話す」ことは講師として、最重要のスキル、と言い切っていいでしょう。
というのは、ここまで講師が自己開示すると、
その後の参加者同士の話し合いの深さが断然違ってきます。
自分が感じたこと、考えていること、本当はどうしたいと思っているのかなど、
自分に正直になってのぞんでくださるようになります。
ある意味、「捨て身」の自己紹介なのであります。(笑)

第5章に続く