三菱自・東亜建設・・・改ざん後絶たず
「失敗できない」現場に重圧
昨日(2016年6月2日)の日経夕刊に掲載されていた。
リード文には次のようにあった。
三菱自動車が燃費データ、
東亜建設が工事データを改ざんし、
国に虚偽報告した問題はいずれも、
社内の「失敗できないプレッシャー」が背景になり、
現場が不正行為に手を染めたとされる。
他社との激しい競争の中で揚げられる目標に、
「ノー」と言えない空気。
専門家は「今回の問題は組織に尽くす日本的経営の負の面が出た」
と指摘している。
三菱自動車を例に挙げれば、
社長が開発当時の社内会議で、
「最高の燃費を目指して」「他社に負けるな」と発言。
それを「必達目標」と感じた開発担当の幹部は、
現場に「何としてでも達成しろ。やり方はお前らで考えろ」と
指示したとされる。
会社不祥事に大きく揺れた東芝では、
「各カンパニーのトップらは目標を必達しなければならないという
プレッシャーを強く受けた」と指摘している。
記事では、最後に明治大の風間信隆教授(比較経営論)の
次の言葉で締めくられていた。
トップの思いをくみ、
幹部や管理職は実績を残そうとしたのだろうが、
法令の中で成果を出すとの前提を忘れてしまった。
不正防止の歯止めは、
上層部の理不尽な指示に「無理だ」と言える
管理職の道徳意識にかかっている
なるほど。
しかし!
現場の管理職は、「上」からの指示に、
「無理だ」なんてどれくらい言えるだろうか?
言えるのか?
そういえば、過去にこんな人がいたっけ。
リーダーから「これやって、あれやって」と指示されるたび、
「でも」と逆説の接続詞から始め、
「これだからできない、ああだからできない」と、
できない理由を細かく細かくあげていく人が。
そう言いながら、結局しぶしぶと仕事に取り組む。
十中八九、そういう感じだ。
結果、何が起きたかというと、
リーダーは「なぜそれをすることが必要なのか」と
説明時間にかなり費やすことになり、
しかも「何をどのようにやったら、それができるか」まで
その人に説明しないと仕事が進まなくなり、
心身ともに疲れ切っていた。
リーダーだけではない。
そのやりとりを見ている私たちでさえ、
前向きな気持ちをそがれるような嫌な感じがした。
そんなに大変なことでもないのに、
なぜこれくらいのことを「はい、やります」と言えないのか。
その人への不信感が少しずつ大きくなった。
「できない」ことを探すのではなく、
「どうしたらできるのか」を最初に探してほしい。
やがてチームの中で、
誰もがその人と一緒に仕事をしたがらなくなった。
その人への「上」からの評価はどうかというと、
もちろん高いわけがなく、
次第に重要な仕事から外されるようになっていった。
これは極端な例だが、
現場で働く者にとって、
経営者層からの指示は、必達でしかない。
それをクリアすれば、これからもこの企業で生き延びられる。
「できない」「やれない」なんて選択肢が、
どれくらいあるだろうか?
それでも、上層部の理不尽な指示に「無理だ」と言える
管理職の道徳意識にかかっている、のだろうか。
まあ、それも心がけよう。
しかし、私は経営者層や幹部に期待する。
目標を部下に伝える時は、
ただ「やれ」だけでなく「ビジョン」もあわせて語ってほしい。
聞いてわくわくするような。
心躍るような。
どんな厳しい数値目標であろうが、
その先にそんな素敵なビジョンがあるならば、
この目標を何があってもクリアしていこう、
人生かけてやっても面白い仕事になれるような、
そんなビジョンを。
数年前に、LCCのピーチ・アビエーションCEOの
井上慎一氏が『カンブリア宮殿』に出演されたことがあった。
社員たちとこれから実現したいことを
それはそれは情熱的に活き活きと語っていたが、
中でも印象に残った言葉は、これ。
(記憶があいまいだが、こんな表現だった)
若い女性たちの間で、
「ピーチしてる?」っていうのが、
流行ったらいいなと思うんです。
週末にピーチを利用してもらって、
気軽にアジアに旅行に行く。
そんな楽しみ方、過ごし方をしてもらえたらいいなと思って。
さーっとこんなビジョンが浮かんだ。
関西空港。
20代から30代ほどの女性。
数人グループ。
働いたご褒美にと、週末は気分転換。
ちょっと韓国にでも行ってこようか。
平日よりも化粧に気合をいれて、
普段着ないようなワンピースを着て、
この日のためにと思って買った帽子なんか被ったりして。
バッグはルイ・ヴィトン。
韓国に着いたら、あれを食べよう、
エステをしよう、
お土産はあそこで買おう。
そんなふうに、きゃっきゃっとお喋りしながら、
空港内で自撮りに興じる。
乗る飛行機はピーチ。
そして帰国し、再び関西空港に降り立ったときは、
楽しかったね、遊んだね、
また、一緒に行こう、今度いつにする?
なんて元気一杯。
なーんていうビジョンが。
もしも自分がピーチで働いていて、
今している仕事の先に、
こんなビジョンがさあっと心に虹のごとく浮かんだら、
日々の仕事は、作業になんかにならない。
魅力的なプロセスそのものだ。
今していることに大きな素敵な意味づけができるのだから。
人は「意味」を求めたがるものだ。
「意味」がないと感じられるものを
やり続けられるほど、心は強くない。
三菱自動車の件に戻ろう。
「最高の燃費を目指して」。
なるほど。
しかし、「最高の燃費を目指す」のは目的でなく、手段だ。
「他社に負けるな」
なるほど。
しかし、「他社に負けるな」も目的ではなく、プロセスの先の結果でしかない。
「なんとしでも達成しろ。やりかたはお前らで考えろ」
なるほど。
絶対、上には相談しゃいけないのね、と閉塞感が心に漂う。
そうではなく、
最高の燃費を目指して、どうなりたかったのだろう?
最高の燃費を実現した三菱自動車は、
世の中に、株主に、お客様に、他社に、
社員に、社員の家族に、
どんなポジティブな影響を与えるものになるのだろう?
世の中にどのような貢献ができるのだろう?
そんな貢献ができる会社として、
社員としてどれくらい幸せに感じられるものがあるだろう?
イメージできることはいくらでもある。
人が必達目標をプレッシャーに感じながらも、
それがネガティブなプレッシャーでなく、
ポジティブなプレッシャーになるには、
目標だけでなく、ビジョンも一緒にセットされていれば、
必ずそうなる。
経営者層および幹部は、ビジョンを語れ!
それが義務!
でないと、同じことがまた起こる。
それはとても残念で悲しいこと。
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