「問いの共有」という概念がある。
聞いたことがあるだろうか?
言葉どおり、「問い」を共有するということ。
『3分間コーチ』(ディスカバー社/伊藤守著)には、次のようにある。
 
 コミュニケーションが活性化するには、
 それなりの環境が必要です。
 その環境とは、
 談話室ではなく、イントラネットでもなく、
 問いの共有です

と。
問い? 質問?
どちらでも同じこと。
ただ、「質問の共有」というよりは、
「問いの共有」のほうが、感覚的にしっくりくる。

さて、この概念、とにかく共感する次第。
組織やチームのビジョンが、絵に描いた餅にならず、
その場を構成する社員やメンバー一人ひとりに、
自分のものとして浸透するだけのパワーがあるものだ。

だから、「問いを共有」するというのは、
リーダーとして最重要なスキルといっても過言ではない。

印刷会社で後継者として働いていた時のことだ。
コーチングを学ぶ前の私は、
会社を存続させるべく、日々焦っていた。
社員に投げかける言葉は、ほぼ100%指示事項。
「うちにお願いしてよかったとお客様が思ってもらえるように、
 品質にこだわって」
「無駄な作業を減らすために、ミスしないで」
「小さなトラブルを察知したら、すぐに私に知らせて」
「お客様の小さなサインを逃さず、キャッチして」
など。
あの時の私は、指示する人。
そして社員は、指示を聞いて実行する人、だった。
社員に求めていたのは、全員で守る「答えの共有」。
私の役割が会社の方針含めてビジョンを伝える人ならば、
社員は、そのビジョンという絵のごく小さなサイズのピースを
間違わないように緊張しながら色を塗っていく人、というイメージだ。

さて、そんな私がコーチングを学ぶ。
学んでからは、質問するようになった。
「私はこう思うけど、あなたはどう思う?」
「どんな優先順位でやっていくと、今までの三分の二の時間で終わると思う?」
私と社員の構図は変わった。
私はコーチング的な質問をする人。
社員はその質問を受けて考える人、になった。
結果、どうなったか?
トラブルが発生しても、指示を待つことなく、
自分たちで対応するようになった。
小さなトラブルの段階から報告をしてくれるようになった。
「紙がよくないから」とか「機械が古いから」など、
環境のせいにする会話はぐんと減った。
つまり、今ある環境の中で結果を出すべくできることは何か、
という前向きな考えや行動をするようになった。

よいことはたくさん起きた。
じゃあ、よかったじゃないか・・・だが、
今だから思えることがある。
本当の意味で自分で考え、行動し、その結果にも責任がもてる、
一人ひとりの社員がそうなるためには、
あともうひと押しだったな、と。
そう、私は「質問する人」であり、
社員は「質問を受けて考える人」でとどまっていたのだ。
社員が私に質問する時は、
状況の確認や、今していることがOKなのかどうかの確認する時だけ。
私に対して「考える質問」をすることはなかった。
それでよかったのか?

いや、今だったら、同じ「質問する」にしても、
全員で「問いを共有」することをしていた。
例えば?

「うちの会社ならではの強みってなんだろう?」
「お客様から選ばれるためには、何が必要だろう?」
「この失敗から学べることは何だろう?」
「来期の売上はいくらを目指そう?」
「作業時間を一時間短くするには、どうしたらいいだろう?」
など。
考えさせるのではなく、全員でともに考える。
ともに答えを探す。
そのプロセスこそ、組織活性化に最もつながるもの。
それまでの社員は、言葉どおり「従業員」。
しかしこういうプロセスがあれば、
社員は、「従う人」ではなく、
組織を成長させるパワフルな存在になる。

そんなこともしていれば、
あの社員一人ひとりは、
より楽しく、より充実感を感じながら働けたのじゃないか。

質問する人、だけで終わらないようにしよう!
問いを共有しよう!
その場にともにいる人たちと。
難しく考えないで。
自分も一緒に考える、そのスタンスさえあれば十分だ。

さあ、あなたはどんな問いを、周りの人たちと共有する?

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