研修が終わってから、「ちょっといいですか?」と
ある受講者から声をかけられた。
彼は、現場のリーダーだ。
あるスタッフが周囲の人たちと関係がこじれて、
なんとか調整しようと奮闘したのだが、
結局そのスタッフは辞めてしまったとのこと。
「こうしてみたら」「ああしてみたら」と、
あれこれアドバイスをした途端、
相手は心を閉ざし、しゃべらなくなり、
周囲とこじれた関係のまま退職してしまったそうだ。
「こういう形で退職になってしまって、残念です。
本人にとって上手くいかなかった経験になってしまい、
これからの人生の何かトラウマみたいになってしまったら、
どうしようかと心配なんです」
とおっしゃる。
Aさんは親分肌タイプだ。
面倒をみてあげたい、頼られる人でありたい、
自分がなんとかしてあげたい、という気持ちが強いのだろう。
リーダーを仰せつかっている責任感が強いからこそ、
現場でおこる問題は、自分が解決してあげて、
スタッフが気持ちよく働ける環境にしたいのだろう。
それはそれで素晴らしいことだ。
その思いは大切にするにしても、
私は次のようにアドバイスした。
「Aさん。Aさんのリーダーとしての課題として、
自分がなんでも解決してあげよう、ではなく、
相手が自分の問題は自分が解決できるようにサポートできるようになること。
なんじゃないの?」
「あっ、痛いところをつかれました・・・」
そう顔を赤らめて俯くAさん。
うなだれる。
そうか、自分でもわかっていたのだな。
Aさんの気持ちもわかる。
しかし、いつも自分が相手にずっと寄り添っていられるわけではない。
相手が問題と向き合い、自分の力で解決できるように
指導し、育て、サポートする・・・。
それこそがリーダーがすることなのだ。
「今、どんな状況なんだろうね?」
「この状況の中で、あなたの周りの人は何を感じ、どう思っているのだろう?」
「あなたに対して、どう思っているだろう?」
「あなたがそれをすることの目的って何?」
「それをすることによって、何が起きると思う?」
「そうなることで、あなたにとっていいことと、
そしてデメリットになることは何だろう?」
などのように、相手が置かれている状態を
少しずつほぐすように、対話を創る。
聞き上手に聞けていれば、
話させ上手に聞けていれば、
自ずと相手は「何を自分がすべきか」の答えが導けるはず。
自分は現場の問題を解決できる人でありたい、
そんなもの、手放そう。
それよりも価値があるのは、
相手が自分の問題を自分で解決できるようになること。
その道は、ちょっと手間がかかるものかもしれない。
でも、どうぞ、決してあきらめるこのないよう。
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