一昨年から支店長についたAさん。
「どうしたら生意気な部下が言うことを聞くんですかね」
と、はなから戦闘モード。

Aさんはその会社の中で女性初の現職。
プレイヤーで確実な実績をあげた今までと違い、
部下のマネジメントに苦労している様子。

「どんな組織にしたいですか?」
「そりゃあ、全員で数字をあげられる組織になればいいですよ」

思い通りの行動が見られない部下たちに、
かなり不満と苛立ちを感じている。
その後も、
どんなに仕事がきついか、
どんなに毎日が忙しいか、
部下との関係が上手くいかない、など
話し続けられた。

「Aさんが部下たちと一緒にやりとげたいことは何ですか?」
「やっぱり、数字ですね」
「ご自身の課題はどのように捉えているんですか?」
「部下から文句がでないくらいに知識を身につけたいですね。
それと、質問されたときに、すぐ教えられるようになりたい」

知識はA‎さんにとって、
現状を切り抜ける武器のよう。
職場での「Aさん」対「部下たち」という構図が浮かぶ。

さらに
「マネジャーは何やっても部下からは悪く言われますから」
と言い放つ。

気持ちもわかる。
言い分もわかる。
しかし・・・。

「Aさん、本当にそうでしょうか?」
「本当って?」
「マネジャーは何をしても部下から悪く言われる存在でしょうか?
私には、Aさんが部下たちを信頼していないように聞こえますが、いかがですか?」
「うーん。言われてみればそうかもしれないですね」
「部下の視点からこの状況をみてみましょうか。
Aさんから自分は信頼されていないと思っているとしますね。
そういう状態で、果たして人はどれくらい数字の達成に向けて、
モチベーション高く動けるものでしょうか?」
「・・・・」

ところで、リーダーについて、ドラッカーは次のように述べている。

◆◆◆

人を問題や脅威として見るのではなく、
資源として、機会として見ることを学ばなければならない。
管理(manage)ではなく、リード(lead)すること。
支配(control)ではなく、
方向付け(direct)することを学ばなければならない。
(P.F.ドラッカー『マネジメント(上)』P31)

人間集団の基準(standard)というものは、
リーダーの仕事ぶり(performance)によって決定される。
したがって、リーダーこそ強みに基づいて仕事をしなければならない。
リーダーの仕事ぶりが高ければ、普通の人の仕事ぶりも高くなる。
(P.F.ドラッカー『経営者の条件』P134)

◆◆◆

相手を変えたくなるときは、誰にもある。
それが職場の中だったらなおさらのこと。
誰だって、職場の中では生きぬくのに精いっぱいだ。
自分の居場所を日々守ることにも。
そのためにややもすると、
結果を求めて、相手に要求するだけになってしまう。

しかし、相手を変えたくなったときほど、
次の問いを自分にしたほうがいい。

「私も変えたほうがいいことは何だろう?」と。

このようなやりとりをAさんとした。
「信頼関係・・・ですね」
今までの勢いどこへやら、打って変わって神妙な様子。

その後のAさんはいかに?
それは知らない。
変わったかもしれないし、相変わらずかもしれない。
しかし、私のとのやりとりはずっと残っているはずだ。
何かの折に、思い出してもらえれば、それでいい。

・・・・・・

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