「ディスカッションにならないですから」
「今回の参加者はおとなしくて、あまり自分から話さないですから」
「お行儀がよくて、静かで受け身な人たちが多いですから」

研修開始の前に、主催側の担当者からこのように言われることがよくある。
それは私を気遣ってのことだ。
私が実施する研修は参加型なので、当てが外れたと困惑しないように、
事前にそのように情報提供くださる。

しかしだ。
研修が終わると一様に言われる。
「とても話しますね。皆さん・・・」
まさか、あの参加者がこんなに自分の考えや思いを話すようになるとは、
全く思わなかったらしい。

なぜ、参加者がそこまで変わるのか?
研修中に何があったのか?

特別なことはない。
答えはとてもシンプルで、
参加者が話す時間を頻繁に設ける、それだけだ。
しかし、頻度が多ければ、それでいいというものでもない。
次のようにセットアップすることが肝心なのである。

・話し合いは、二人一組のペアで。
 話し合う人数が少ないほうが、それだけ話す時間が増える。
 4人一組、5人一組くらいになると、同じグループメンバーに気を遣い、
 結局話さなくなる人がでてくる。
・それぞれ、話す役割、聞く役割を設ける。
 時間がきたら役割を交替する。
 「話す役割」の時は、話さなければならない。
 黙っていたら、相手に迷惑をかけてしまう。
 そのように、否応なしに話す環境を創る。
・正解をだすことが目的であらず。
 答えは一つではない。
 話しながら自分の答えを探す時間。
 なので、簡潔明瞭に、理路整然と話さなくてOK。
 そう伝えて、「ちゃんと話さなくては」から開放する。

話し合いの時間は、短い時間のほうがいい。
長くて三分。大体は2分くらい。
仕事をしながらの会話は長くても3分くらい。
それをイメージしている。
2分程度の話し合いの時間を頻繁に経験しているうちに、
その時間の感覚が自然に身につく。
そのうち、限られた時間の中で、
何をどのように話すといいかがわかるようになり、
だんだん話すスピードが早くなってくる。
話し合いは、結論まで出し切るのが目標ではない。
結論までいかないからこそ、
「次、いつ話そうか」と、職場ではなるもの。
そういうことも学んでもらう。

それを繰り返し繰り返ししていくと、
参加者の声はだんだん大きくなり、
自分の考えや意見に自信が持てるようになるので、
顔も上がってくるし、目に力が宿ってくる。

さて、こうなるためには大切なことがもう一つある。
それは、参加者が発表した後のフォローだ。
ここが講師の腕の見せどころで、発表内容にプラスの意味づけをする。
例えば?
「お客様から信頼されるために、こちらから挨拶するようにしています」
という発表内容だったら?
このように私は返すだろう。
「挨拶するというのは、誰もが当たり前でしょと思っているけれど、
 当たり前のことを当たり前に、どれだけ真剣にできるかですよね」
まず相手が話された内容を受け入れる。
そして、質問する。
「お客様から信頼される挨拶というのは、 
 どういう挨拶をしていると、自分で“できた”とわかりますか?」
これは、「挨拶」という言葉の意味づけをより具体的にするための質問。
具体性があれば、聞いている他の参加者も真似できるし、
本人にとっても、より再現できるようになる。
「じゃあ、せっかくの機会だから、
 私をお客様と仮定して、挨拶してもらえますか?」
と、その場でロールプレイをすることもある。
さらに、お客様にそういう挨拶をし続けると、
これから先どうなるか、何が違ってくるか、
いいイメージを描いてもらう。
もしかしたら、
お客様がまだ話されていない案件を
次回来訪の際に話題にだされるようになるかもしれないし、
他のお客様を紹介してくれるかもしれない。
そのような先の明るいイメージがあるからこそ、
望ましい行動は継続される。

これらを参加者は体験することで、
自分から話すようになり、自ら発表するようになり、
これから何に取りくむかを自分の言葉で表現したくなってくる。

これらを職場で活かすには?

私がお伝えしているのは、
毎日、スピーチの時間を設けてみたらいかがでしょう?
ということだ。
時間は一分間という時間で構わない。
夕方よりはこれから仕事が始まる朝のほうが、集中して臨める。
毎日、一人ずつ。
スピーチが終わったら、他の参加者が感想を伝えるようにして。
聞いて参考になったこと、よかったこと、
その話から聞き取ったスピーチした人の強み、など。
テーマは、やはり仕事に絡めたほうがいい。
仕事で工夫していること、上手くいったこと、いかなかったことなど。
これからの目標、それに対して今はどうなのか、これからどうするのか、
という内容もいい。

これを毎日、毎日、毎日続けることで、
相手は必ず自分で考えて、自分の言葉で話せる人に成長する。
もちろん、初めから期待どおりにいかない。
しかし、あきらめてはならない。
目に見える効果は、最低三カ月。

あっ、ただ、条件がひとつあった!
それは、聞き手が聞き上手に聞いていること。
つまり、話させ上手になっているこということだ。
話し手の目をみながら、
表情豊かに、あいづちをうったり、頷いたり、
興味関心を全身で表現して聞くこと。
聞き下手の人の前では、
話すことが辛くなってしまう。
それでは、何もならない。

人は誰でも、自分で考える力を持っている。
自分の考えを自分の言葉で表現できる力も持っている。
それを信じて、話す環境を整えてあげる。
これは、リーダーしかできないことだ。

Point・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

社員やメンバーが自分で考え、
自分の言葉で話せるようになってほしかったら、
一分間スピーチの時間のように、
本人が話す時間を頻繁に創ってあげること。
そして、話した内容にプラスの意味づけをしてあげること

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