20代の頃の話だ。
本部に勤務していた時、
YさんとKさんという上司がいた。
二人は、支店で相当実績をあげた営業担当者。
年齢も30代半ば、ついている役職も同じと、
似ているところが多々あった。
しかし、私たち部下からも
上司からも評価は分かれていた。
理由は何か?
一言で言えば、「誠実さ」だ。

印象的なエピソードがある。

まずYさんから。
時間は夕方6時近く。
そろそろ仕事を終えようかと、
椅子を立ち上がったその時、電話がなった。
受話器をとると、ある支店の次長からのもの。
電話を切った時に、タイミングよく職場にYさんが戻ってきた。

「Yさん、さきほどA支店のT次長から電話がありました。
 明日の会議に参加予定の方が、仕事の都合でどうしても参加できなくなったそうです」
「ああ、うんうん、そう。わかった、わかった~」
なんとも軽い聞き方が気になる。
私のほうなど全く見ず、書類を整理しながらの相づちだ。
いずれにしても、「お願いします」と言って職場をあとにした。

事件は翌日に起きる。
その会議にA支店の担当者が無断で欠席したと、
主催側であるうちの職場で騒ぎになったのだ。

「福田さん(私の旧姓)、A支店の担当者が今日の会議に欠席しましたが・・・」
次長が探るように私に訊ねた。
「ええ、昨日午後6時くらいにA支店の次長から電話がありました。
 担当者は今日の会議に欠席しますということで」
「それを誰かに伝えた?」
「はい、Yさんに伝えました」
「Yさんは福田さんから何も聞いていないって言っているけど」

驚いた!
確かに伝えたのに。
あの時のYさんの様子を思い出す。
「うんうん」と頷いていたものの、なんとも軽いノリだった。
ちゃんと聞いているかどうか、怪しい態度だった。
もっとしっかり伝えればよかったか・・・。

「Yさんと福田さんのどっちが本当なのかな」
次長の鋭い目は私をとらえて離さない。
昨日の事実を今いちど繰り返し伝える。
「わかりました。私も福田さんが本当のことを言っていると思います。
 Yさんは、福田さんからの伝言を忘れちゃったんでしょうね。
 Yさんともう一度話をしてみます」

後味が悪い。
忘れていた・・・とは、
部下の私を軽んじているとしか思いようがない。

翌日になって、Yさんがばつが悪そうに声をかけてきた。
「一昨日のことだけど、俺、福田さんから聞いていたっけ?」
「言いましたよ。Yさん、『わかった』って言ったじゃないですか」
「そうだっけ・・。全く覚えていないんだよなあ」
全く覚えていないとは・・・。
「今度からは、どんなことでも全部メモに書いて渡してくれる?
 そしたら、こんなことにならないから。お願いね」

なおさら後味が悪い。
まるで、口頭で伝えた私に非があるような言い方だ。
Yさんは、相当プライドが高いのか? 
「はい」と返事をしたものの、憂鬱になってきた。
ちょっとは謝ってくれてもいいのに・・・。
一部始終を見ていた先輩や後輩が、
「福田さんはなにも悪いことはないのに!」
と、私よりも悔しがってくれたことが少しは慰めとなった。

さて、もう一人の上司、Kさんはいかに?
そのエピソードは次回。
こうご期待!

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