終わり良ければ、すべて良し。
言わずもがな
「物事は最終の結末がもっとも大事であり、途中の過程は問題にならない」
という意味だ。
結果さえよければ、プロセスで起こったことは目をつぶろう、
というニュアンスもあろうが、
やはりプロセスは見逃せない。
しみじみそう感じたことがあった。
企業の若手の方たち対象に、
あるプレゼンテーションのトレーニングの講義を受け持った。
担当したのは2チーム。
それぞれAチーム、Bチームとしよう。
Aチーム。
こちらの話を聞いているのか聞いていないのか、
頷きもなく、まるで能面のような表情。
それを真面目に聞いているといえばそうかもしれないが、
テレビか映画を観ているかのようなその態度に、
反応うかがい知れず。
わかっているのか? 伝わっているのか?
途中確認するも、感触がつかめず、同じことを繰り返し話す自分に気づく。
ある回の時は、開始時刻に揃ったメンバーは3割程度。
ばたばたと1~2分遅れて8割揃い、それから30分ほどして全員揃った。
その態度に業を煮やし、叱責した。
グループディスカッションも、
それぞれのメンバーの顔色をうかがっているのか、
「私はこう思う」「私はこうしたい」と意見はちらほら。
何か発言しても、「でも」と言われては、退けられる。
事務局の反応は、「なんだか大人しいね」「冷めてるね」
「挨拶など礼儀がないね」。
一方、Bチーム。
用意されたホームワークには取組み、
私の進行に不明なところがあれば、その場で質問する。
表情が見えるその受講態度を見ながら、
私も話し方や伝える内容を変えられる。
まれに遅刻する者もいたが、前もって報告があった。
グループディスカッションは、
リーダーを中心に模造紙を活用しながら、
それぞれの意見を「私は・・」「私は・・・」とだしあい、
異なる意見をお互いに合意のもと調整しながら、
成果発表の準備をされる。
事務局の反応は「若い人らしく元気だね」
「意見が活発にでて積極的だね」「頑張っているね」
さて、それぞれのチームの成果発表の日。
どちらのほうが「結果」が良かっただろう。
Aチームだったのだ。
成果発表直前の回になり、
ようやくそれぞれのメンバーが、
明確に役割分担をし、
資料作成に拍車がかかったAチーム。
資料の出来栄えも、テーマに対する理論の組み立ても、
エビデンスの活用の仕方も、新しい発想というアイディアレベルでも、
どれをとってもAチームのほうがすぐれていた。
正直、舌を巻いた。
最終プレゼンしか見ていない人にしてみたら、
出来栄えの軍配は文句なくAチームだ。
講評もAチームを評価する内容が続いた。
ふと思った。
「ああ、これで、Aチームのメンバーたちは、
『終わり良ければ、すべて良し』を学んでいくんだな。
これが高じていって、
『結果さえよければいいんでしょ。結果さえ良ければ』っていう
考え方になっていくんだな」
それを目の当たりにした思いだった。
私がした講評は、自ずと、
Aチームには出来栄えを、Bチームには今に至るまでの
個々の取り組むをそれぞれ承認する内容となった。
どうしても私たちは、時間的な制約もあり、
相手がだした「結果」のみで、判断し評価せざるを得ない。
しかし、やはりプロセスをなおざりにしてはならない。
結果という事実、プロセスという事実、
双方をみたうえで考慮し、相手の指導ポイントを明確にする。
そういう意識を備えていることが大切だなと、
あらためて実感した次第である。
その後の話をすれば、
「ありがとうございました。猪俣さんには本当に感謝しています」
そう別れ間際に声をかけてくれたのは・・・
Bチームのメンバーたちだった。
・・・・・・・
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