自宅そばの遊歩道を歩く。
向こうから30代半ばと思しき男性が歩いてくる。
見るからに会社員。
彼は携帯で話しながらなので、
私の存在にはあまり気が付いてなさそう。
次第にお互いが近づいて、
さあ、すれ違うぞ、というまさにその時、
耳に入った。
部下は選べないからさぁー!
電話の相手は同僚か? 後輩か?
はたまた部下か?
相手の相談にのっているのか、
それとも自分が相談にのってもらっているのか?
サスペンスよろしく想像かきたてられる。
しかし、瞬間、私は言った。声なき声で。
それ、そのままあなたに返すわよ
部下だって上司を選べないぞ。
お互い様だ。
働くっていうのは、選べないことばかりだ。
希望していた部署じゃない。
企画がしたかったのに、なぜ、地味なこの仕事。
あっちのプロジェクトに入りたかったのに、なぜこのプロジェクト。
どうしてこの人と一緒に仕事せにゃあかん。
ああ、あのお客さん。気を遣うんだよなあ。
エトセトラ、エトセトラ・・・。
自らの意志で選べない環境で、
なんとか折り合いをみつけてやらないといけない。
それが大人というものである。
が、どうだろう?
もしも・・・。
もしも、自分でこれらを選んでいたとしたら?
気持ちのうえで何か変わらないだろうか?
自分で選んでこれらのことをしていると意識をもったら、
その時から、これらの環境に流されている自分じゃなくて、
しっかりと自分の足でたって自ら主体的に生きている、
という感覚に少しでもなれるのではなかろうか。
ストレスに感じることだって、
少しでも和らぐんじゃなかろうか。
脳科学者の茂木健一郎さん曰く、
脳の働きは、もともと自発的。
自分で選んでいるという意識をもったときに、
モチベーションになる、というのを聞いたことがある。
ある外資系の企業では、こんな研修をしているそうだ。
自分がとるどのような行動も
「私は○○を選んでいる」と言いながら行うという。
例えば「私は今、顧客リストを作ることを選んでいる」「私は今、上司によばれて、席をたつことを選んでいる」「私は今、電話をとることを選んでいる」など。
これを一日中延々と続けると、
自分がやっていることは全て自分が選んで行っていることなんだ、
という自覚が湧いてくるそうだ。
春先、ある研修で「ほんとうはこんな仕事はしたくない」と、
不機嫌そうな20代の男子がいた。
この話をして、「自分で選んでやっている」と言い聞かせることを進めた。
すると、どうだろう。彼もなかなかのもので、
「猪俣さんがそう言うんだったら、やってみるよ!」
まるで挑むように、言ってきた。
さもありなん。
すすめている私がやっていない、
しかも「あの人のせい、この人のせい」なんて
被害者意識になっていたら、彼だってやる気になれない。
今月末に3ケ月ぶりに彼に会う。
話題にでないかもしれないが、
スタンスなんて、言葉でなくてそのままにじみでるものだ。
私は○○○を選んでいる
久々に意識してみようか。
願わくば、その彼がこのブログを読んでいないことを願って。
今日からまたやってみるのである。
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