研修で自己紹介をするときには、
コーチングを学ぶきっかけとなったエピソードを語っている。
大方、次のような内容だ。
銀行で働いたのち、家業の印刷会社で後継者という立場で働きました。
銀行の社風とは全く違って戸惑いました。
なかなか馴染めず、人間関係で相当苦労しました。
自分のリーダーシップってどうなんだろう?
どこを改善したほうがいいのだろう?
一人で考えていてもわかりません。
そこで、思い切って女性の若手社員に訊いてみました。
彼女はこう言いました。
『じゃあ言わせてもらいます。
猪俣さんのやっていることや言っていることは正しいです。
でも、もっと私たちの話を聞いてくれてもいいですよね』
ショックでした。
でも、大切なことを学びました。
人は正論だけでは決して動かない、ということを」
自己紹介は、その後私がコーチングを学んでから、
どのような成果があったのかを語り、いつもはそこで終了。
が、どういうわけか、その日は話しを続けた。
コミュニケーションは“生もの”です。
いい関係だなと思っても、
数分後には、何かのきっかけで悪くなることもあります。
でも、そこからまたやり直せばいいんです。
コミュニケーションはいつでも、いつからでもやり直せる、
そう信じている人が、結果として周りの人と上手くやれるんです。
その日のアンケートに、
一言、こう書いてくださった方がいた。
「コミュニケーションはやり直せる!」と。
走り書きだったが、筆跡が力強かった。
その方は、これからの行動がきっと変わるに違いない。
遠慮していた声かけも、自分からするようになるかもしれない。
迷惑かけるかもと思っていたお願いも、小さな声で言えるようになるかもしれない。
嫌われたくないからと断れなかったことも、
どきどきしながら「すみません」と断れるようになるかもしれない。
注意できるようにもなるかもしれない。
叱ることだってできるかもしれない。
相手のことを十分配慮している人であればあるほど、
自分が思う以上に楽観的になってしまって構わない。
コミュニケーションは、いつでも、どこからでも、やり直せるから。
必ず。
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