銀行の人事部で働いていた20代後半。
この銀行をもっと良くしたい、
何をしたらもっと良くなる?
模索していたあの頃。
さて、ある飲み会でのことだ。
入行して三年目の若手たち10名ほどが集まり、
そこに私と同期のSさんも招かれた。
Sさんは優秀ながら飾らぬ人柄で、
上司、先輩のみならず後輩たちからも、
とても慕われている女性。
だからこそ、特に若手にとっては、
Sさんが話す意見を自分が探し求める「答え」として
受けとってしまう。
それぐらい影響力がある人だった。
さて、飲み会ともなれば、
ご多分にもれず「この銀行ってさー」のような、
よもやま話で盛り上がる。
詳細はもう覚えていないが、
Sさんが「この銀行ってこういうところが足りないんだよ。
だから残念なんだよ」
と、実にもっともらしく、とうとうと語った。
若手たちは、うんうんと納得した様子で聞き入る。
飲み会もお開きとなり、
お疲れさま、とそれぞれが散った。
冬空の風が冷たい中、Sさんと肩を並べて歩いていた。
「Sさん、ちょっといいかな」
「うん、何?」
全くもって無邪気な態度のSさん。
言うべきか迷ったが、受けとめ方はSさんの自由と思い、
勇気を振り絞り言った。
「Sさん、さっきの飲み会でね、
うちの銀行の体制的な問題を、ここが悪い、足りない、って
若手たちに話していたじゃない。
批判しているように聞こえるんだよね。
あなたは若手からとても慕われているんだから、
あなたが言ったことを若手はそのまま信じてしまう。
だから、言いっ放しじゃなくて、
これからどうしていくといいのか、何ができるのか、
そんな前向きな話にしてくれないかな。
私たちは、ここで働いていくわけだし」
肩を並べて一緒に歩いていたSさん。
突然立ち止まった。
すわ、怒るか・・・と思いきや、
「ほんとだね・・・。
ごめん。
私、周りが見えなくなっちゃうところがあって、
自分勝手に話しちゃう。
言っちゃまずいことを平気で言っちゃう。
まずいなあ。
ふっこ。教えてくれてありがとう」
そう言って、敬礼。(酔いの勢いか?)
これには驚き「まあまあ、いいから」と、
反対にこちらがあたふたした。
さすが、Sさん。
この潔さが違う!
自分に非ありと思ったら、率直に認め、謝る。
なかなかできないことだ。
しかし、感じ入ったのはそれだけではない。
翌日の夜、彼女から電話があった。
「ふっこ。この前は本当にありがとう。
言われないとわからないから、助かったよ。
それでね、あの件について私なりに考えたんだ。
こうしてみたらいいんじゃないかって、
対策を考えたんだけど、聞いてくれる?
ふっこがこれから仕事していくうえで、
助けになるんじゃないかと思って」
この真摯さ!
誠実さ!
正直さ!
ああ、だから彼女にはかなわない。
周りから好かれるはずだ。
彼女が親友でいることが、とても誇らしかった。
あれから何年?
ほー、20年ちょっとも経っている。
彼女のあり方は、今でも私のモデルだ。
そんなことを懐かしく彼女に話すことがある。
「えっ、そんなことあった?
ぜーんぜん覚えてないわ!」
豪快に笑う。
なんともSさんらしいのである。
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