先日、ある製造会社のリーダー候補対象に
コミュニケーションセミナーを行った。
奇数ゆえ、二人一組のペアで実施する場面では、私が入った。
エクササイズのテーマは、「職場で問題と思っていること」について。

「今、どんな状態ですか?」
「ところで、望んでいる状態は?」
「何が問題だと思いますか?」
私よりも若いMさんは真剣そのもの。
よくよく話を聞いてくださった。

「これからどうしますか?」のMさんの質問に、
「お客様が納期を守ってくださらないことに対し、
 本当は『守ってほしい』とお願いしたいのにできていない。
 言うべきところはちゃんと伝え、
 お客様と『納期』というゴールを共有し、
 よい関係を築きながら、納期に向けて気持ちよく仕事ができるようにしていきたい。
 だから、お客様にそれを要望するロールプレイングを
 メンバーと一緒にしてもいいかもしれない」
と、もっともらしいことを話した。

それを聞いて、Mさんは感じ入ったように言った。
「猪俣さんは、自分ができることは何だろうと考えられているところが
 素晴らしいな、と思いました」
そこにはMさんのしみじみとした本当の気持ちが込められていた。

びっくりした。
まさか、そのような感想が返ってくるとは思っていなかったからだ。
「そうですね」「ええ」「なるほど」という反応を想定していたし。

直感で思った。
彼女の職場、会社では、
おそらく何か問題を解決しようとする際、
「相手がこうだから」「会社がこうだから」と、
原因を周囲に委ねている上司が多いのではないかと。
自分がアクションを起こして、
職場の問題をなんとかしていこうという人は少ないのではないか、と。
いわゆる、不平不満。
しかし、Mさんはそんなことは聞きたくない。
もっと前向きな言葉を上司から聞きたいのだ。
そういう上司を求めているのだ。

ということをMさんに訊ねてみた。
「そうなんですよね・・・」と小さな声でうなづくMさん。

人はそこにいるだけで影響を周囲に及ぼしている。
環境のせいにしたくもなる。
会社のせいにもしたくなる。
お客様のせいにもしたくなる。
自分はちゃんとやっているという自覚があれば、
なおさらのことだ。
それでも、一時でもいい。
「自分にも責任の一端があるとしたら」と考えてみてほしい。
違う景色が見えてくるはずだ。
それに、周囲の環境のせいばかりにしていては、
ストレスがたまるばかり。
自分の力ではなんともしようのないことばかり言っているのだから。
無力感が増すばかりだ。

何よりも、自分が話している言葉、自分の振る舞いや表情を感じ、
影響を受けている人がすぐ目の前にいる。
その責任を忘れずに。

自分ができることは何?
この質問は、結局、上司としての自分を一番助けてくれる。

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