銀行員二年目の時、24歳くらいだったろうか。
私は営業部で融資業務を担当していた。
人事異動で、他店からAさんという方が入ってこられた。
担当は得意先だ。
Aさんは前任店で実績が高かったらしく、
おそらく栄転で営業部に転勤されたと記憶している。
Aさんは20代後半くらい。
眼差しが優しく、親切で謙虚な感じもし、
誰の話も丁寧に聞かれる様子は、
とても好感を感じる雰囲気だった。
おそらく、前任店でもお客様から好かれていたのだろうな、
お客様がAさんのためだったらと協力したくなるような、
そんな関係を築かれた方だったろうな、と思った。
しかし、Aさんにとって宇都宮市は初めての地域。
地域が変われば、顧客層も全く異なる。
得意先はほんとうに大変な仕事だ。
次第に、穏やかなAさんの様子が変わっていった。
一挙手一投足に焦りの色が隠させない。
「Aさん」と声をかけても、以前だったらこちらを向いて、
にこやかに「はい」と答えられていたのが、
見向きもせず、訪問準備にいそしむ。
営業店内を小走りする様子は、
時間に追われ、余裕のなさを全身で表現していた。
心なしか、呼吸も浅いように見えた。
そうなのだ、Aさんは明らかにおかしかった。
ストレスレベルがかなり高かった・・・のだと思う。
「大丈夫だろうか」
もうしばらく経てば営業部にも慣れて、
落ち着くかもしれない。
そんなある日、営業部全員が息をのむニュースが飛び込んだ。
Aさんが事故にあったと。
詳細は私の耳には入らない。
バイクを運転中、車と衝突したのか、
横転してぶつかったか・・・。
しかし、非常に厳しい状態だと。
それだけが伝わった。
翌日か、翌々日だったろうか。
私たちの祈りもむなしく、Aさんは亡くなった。
なんとも言えない重い空気に私たちはのまれた。
自分の力を過信するわけではないが、
もしも、Aさんの様子があまりにもおかしいと感じたあの時、
Aさんに何かしら声をかけていたら、
もしかしたら最悪なことにはならなかったのではないか。
Aさんが少し立ち止まるきっかけにでもなったのではないか。
もう25年も前のことでありながら、
それでも今だにふっと思うことがある。
永遠に答えがでないお題に、今でも時折向き合う。
ただ、このことから学んだことがある。
その人に声をかけようか、
そう直感が働いた時は、何かのサインであるということを。
それが相手にとって、助けになるかどうかはわからない。
しかし、そう直感が働いた時は声をかけたほうがいい。
そんなことを学んだ。
部下でも。
後輩でも。
同期でも。
先輩でも、
上司でも。
ちょっとした「声かけ」が、相手を救うことはあるのではないか。
たかが「声かけ」、されど「声かけ」だ。
そんなことを今日はお伝えしたく。
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