社会人になった私が、
本当の意味で「自分で考える」それも、
「深く考える」ということを学んだのは、
当時の上司、Kさんの問いかけがきっかけでした。

Kさんは、何かにつけ、
「あなたはどう思うの?」
「どんなことをこの会社でしたいの?」
「あの人と同じ・・ではなく、あなたは何がしたいの?」
あわわあわわと私がなっていると、
「それがないと、あなたがこの職場にいる意味がないよ」
とまで迫ってきました。

しかし、Kさんはただ単に質問していただけじゃありませんでした。
正面から真剣にこちらの目を見据えながらのその問いは、
とてもパワフルでした。
まだまだキャリアも少ない私でしたから、
実績もないうちに自分の意見を主張するなんてという遠慮もあり、
本当に思っていることを言わないようにしていました。
しかし、Kさんの静かな熱量は、
じわじわと私の本気度を高めてくれました。

一回だけではなく、
何回も何回も「あなたは、どうしたいの?」と問われる。
本当のことをいうと、
なかなか考えがまとまらず、苦しくも感じました。
しかし、その問いは、
Kさんの私への信頼や期待があるからこそということも感じられ、
同時に一人の人として、
ちゃんと自分は認められているのだという肯定感も得られ、
仕事のやる気も高くなっていたことを覚えています。

Kさんは決して、
「ここであなたがすることは、これこれでしょ」と
答えを言うことはありませんでした。
私の答を待ち続ける、そんな時間の積み重ねの中で、
次第に私は自分の考えが整理でき、
自分の言葉で表現できるようになっていきました。

「ここで中堅社員対象の研修がしたい。
 それも女性の。女性のリーダーを増やしたい」
ようやく言えたのは、
上司が最初に問いかけた時から、
一年近くは経っていたと思います。
しかし、その時のKさんの「よし!」という嬉しそうな表情、
「よし! それはあなたが中心になってやれ」という言葉。
その場面は、今でも昨日のことのように覚えています。

振り返ると、Kさんは、
会社の中で、同僚、上司、部下からも、
とても好かれていて、信頼されている人でした。

答えは相手の内側にある。
内側にある答えを、
自らの力で引き出すことだって、人はできる。

Kさんはそれを知っていたのでしょう。
しかし実際にするには、
相当な忍耐が必要になってきます。
「どう思う?」と聞いて、
「わかりません」と返ってくるのは、
日常茶飯事でしょう?
毎度のようにそれが続くと、
もう訊かないで指示しちゃおうかな、
と誰でもそういう気持ちになってきます。

しかし、こちらも簡単にあきらめない。
相手が「わかりません」と返してきたとしても、
それでも待つ。
「そう? もう少し考えみようよ。
 何か答えがあるとしたら・・・って
 考えてみたら、どう?」と、
促してみましょう。
もちろん人にもよりますが、
相手がこちらを信頼してくれているのなら、
自分の答を探すことに挑戦してくれることでしょう。
すぐに答えを出さずに、待つ。
楽しみながら、待つ。
あまりにも緊急事態の時は別ですが。

相手の答を待つこと。
その時間こそが、
深く広く考える人を育てるのです。

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