コーチングのスキルのひとつに「アクノレッジ」があるが、
私はこれをとても大切にしている。
ちなみに、アクノレッジとは、
相手の存在を認めることを伝える行為やメッセージをさす。
そういう私を「ほめ上手」と言ってくださる方もいらっしゃる。
一方、私の役割として、
相手に言うべき時にはタイミングを逃さずに、
その場ではっきり言うことも大切にしている。

といっても、ほとんど研修中でのことだだ。
「あくびをしましたね。
 もしもするならば、ばれないようにしてください。
 それが、相手への気づかいです」
「足も腕も組まないでください。何かガードしているのかな、と、
 近寄りがたく感じます」
などなど。

特に、新入社員研修を担当する時は、
担当者からよくこうお願いされる。
「先輩や上司から可愛がられる新人になるように、
 マナーやコミュニケーションをよく教えてあげてください」
可愛がられる?
その反対の「可愛がられない」新人像を考えてみると・・・。
 ・上司や先輩と目を合わせない。俯き加減。
 ・話を聞いている時に無表情で、何を考えているのかわかりずらい。
 ・教えてもらうことを含めて、何かやってもらうことは当然と捉えていて、
  感謝の態度や言葉が見られない。
 ・教えてもらうことを待つ姿勢が目立つ。
 ・指示された範囲内でしか行動しない。
 ・わからないことはわからないと意思表示すればいいのに、
  わからないなりになんとかしようとするので、
  後日の修正が大ごととなる。
エトセトラ、エトセトラ・・。
だから、新人研修は、講師というよりは、
まるで生活指導の先生のようだ。

この件に関し、あることを思い出した。
それは、いい思い出だ。
銀行で新入社員研修を受けていた時のこと。
新人が研修参加中に約束する態度のひとつに、
「5分前行動」というのがある。
オンタイムに研修がスタートできるように、
5分前には自分の席に戻って、
研修受講の準備ができているように、というものだ。
それは大会議室で行われる講義の時だったが、
休憩時間も終わり、研修が既に始まってから、
慌てて会議室に入ろうとした男子が三名いた。
その時にファシリテーターをしていた人事部の女性は、Mさんという方。
私より4、5歳上の方だ。(もしかしたらもっと若かったかも)
彼らが慌てて入室し、急ぎ自分の席に戻ろうとすると・・・。
「そこで立っていてください。」
Mさんの凛とした声がマイクを通して会場に響いた。
はっとして、そこに立ちすくむ彼らたち。
緊張感が走った。
「どうしてなのかは、わかりますね?」
Mさんの軽やかな声が再び響く。
そうして、10分くらい経ったあたりだろうか。
「では、後ろのに立っている方は、自分の席に戻ってください」
Mさんはそう指示し、何ごともなかったかのように講義に戻った。
なんて毅然としていて、かっこいいのだろう!
23歳の私は見とれるばかりだった。

もう30年も前の話なので、前後の詳細は記憶があいまいだ。
しかし、起きたことは、ただそれだけ。

言うべき時に、はっきり言う。
「どうしたら、怒らないで叱れるようになりますか?」
と訊かれることも多い。
「怒るは感情の吐きだし」で、
「叱るは相手のためを思って」うんぬん・・・と訊くが、
どっちになってもいいのではないか。
相手の言動や行動が「まずい」と感じたら、
そのことを伝える、どうしてほしいのかを伝える。
ただ、それだけのこと。
最もさけたいのは、本人がいないところで、
「あの人は、なぜ、○○○○なんだろう」と愚痴のオンパレードになってしまうこと。
そうなると、ストレスレベルはどんどん高くなるばかり。

もちろんこちらの言い分を言って終わりではなく、
相手も自分の言い分を言えるよう促すことは大切だ。
こちらの話を聞いてどう思ったのか、感じたのか、考えたのか。
これからどうしようと思うのか。

年上の役割は、
若い世代の行動、言動が「まずい」と感じたら、
ちゃんと注意したり、諭したり、
教えることだと思う。

言うべき時に、はっきり言う。
目の前の若い世代が、
未来出会うであろう上司や先輩たちと、
よりよい関係がつくれるように。
自分の強みを周囲の成功のために発揮できるように。
周囲の人たちの役に立つ喜びが味わえるように。
言うべき時に、タイミングを逃さず、
はっきり言おう。

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