(前回からの続きです)
Aさん「今日の話で猪俣さんが依然と随分変わったんだなって思いました」
私「うん、あんなふうに言ってきてくれた部下には感謝している」
Aさん「その部下は、猪俣さんを信頼していたんですね」
私「えっ?! 信頼している? いや、そんなことはないと思うなあ。信頼していないから、あんふうに耳の痛い内容になったんじゃないの?」
Aさん「いえ! 信頼していたからこそ、猪俣さんに言えたんだと思います」
普段おっとりしているAさんゆえ、ここまで「きっぱり」言われる彼女の雰囲気に圧倒されました。
私「なんでそこまで思うの?」
Aさん「私、上司に自分の思いや気持ちを伝えたいことがあっても、すぐにそうしないんです。この人にそういうことを打ち明けて大丈夫かどうか、わかってくれる人かどうか、すっごく考えるんです。何日も、何日も」
私「そこまで・・・。それで、わかってくれるかな・・・と思うと話せるの?」
Aさん「いいえ! わかってくれるかな? じゃないんです。
この上司だったらわかってくれるって確信が持てたら話せるんです。
だから、その部下は猪俣さんのことを信頼していたんですよ。
わかってくれると思ったから話せたんですよ」
なるほどなあ、そういう考え方もあるのかと、しみじみしました。
今まで私は、その部下は私のことなど全く信頼していなかったと思っていましたが、その逆の捉え方もあるものなのかと。
確かに、部下にしてみたら、上司に本音を言うのはかなり勇気が必要なことかもしれません。
いえ、相当な勇気が必要でしょう。
組織の成長が停滞している企業に共通していること。
その最たるものの一つは、部下が上司に直接不平不満を言わなくなっていることではないでしょうか。
この上司に何を言っても無駄だ。
そういうあきらめムードが漂っているような。
しかし、部下があなたに不平不満を言ってきた時こそチャンスです。
あなたと部下と組織がよりよい方向に成長していくための。
加えて、部下はよく観察しています。
その後のあなたがどのように変わるのかを。
さて、その部下との関係がどうなったのか、後日談をお話ししましょう。
数か月経った頃、部下から言われました。
「猪俣さん、雰囲気が変わりましたね。
私たちの話をとても聞いてくれるようになりました。
猪俣さん、すごく努力されているんですね」と。
それからの部下は、ほどなくして私の右腕的存在にまでなってくれました。
自分にとって耳の痛い話はできれば聞きたくない。
そんなことで、より疲れたくなんかない。
しかし、どうでしょう。
それは自分への批判ではなく、部下たちがより主体的に働けるために何が必要かを彼女彼ら自身が私たちに教えてくれているのだと捉えてみたらどうでょう。
それは耳の痛い話ではなく、よりよい仕事をするための確固な情報となるでしょう。
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◆今日の問い◆
「相手と自分との会話を、周囲はどのように見ていると思いますか?」
組織において、上司は360度見られている立場。
誰かと会話している様子を見て、他の部下たちは何気なく「この上司はいかなる人ぞ」と評価しています。
常に見られている自分を意識して行動する。
それは、よい意味で自分の身を守ることにもなります。
そういう意図があってのこの質問です。
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