コーチングでは、クライアントの声を「今、聴けること」を喜びなさい、ということも教えられる。

明日も明後日も同じようにその人との関係は続くと、どこかで思っている。
しかし、この人の声を聴くのは当たり前ではなく、もしかしたら今が最後になるかもしれないと思ったら?

その人が紡ぐ一つひとつの言葉、声の調子、トーン、表情、動作。

何が違って見えるだろうか?
そんなスタンスで聴いていると、「あれ? おかしいな?」ということに気づく。

「このままだと私たちは、会員のあやつり人形になっちゃう」

Aさん、言う。

あやつり人形?
おかしい。

Aさんは「お役に立ちたい、貢献したい、みんなのために」を大切にしている。
その人の「言葉」じゃない。

ということは?
誰からか、吹き込まれたか?

可能性はある。
Aさんは自分よりも相手を優先し、尊重するタイプ。
相手の意見に共感するあまり、それは自分の意志や行動を方向づけるものになってしまうことも考えられる。

まあ、全部仮説だけどね。

「あやつり人形ねぇ。もしかしたら、誰からか、そう言われた?」
「あっ、図星! 会員のBさんとこの前から言われて・・」

話は続く。

その人を聴く。

そうすると、何か大切な本質的な情報が浮かび上がる。
そんなことが起きる時もある。

コーチングは、クライアントの世界を垣間見るもの。
そういう意味で、コーチはいつも旅している。

自分という物語を聴かせてくれるクライアントは、かけがえのない友だ。