こんにちは。storyIの猪俣恭子です。
コーチングのスキルはそれこそ多くありますが、中でも「質問する」スキルは「聞く」「フィードバック」とあわせて、コアスキルといっていいでしょう。
それは、とってもパワフルなスキルです。
私たちの心に、思考に、とてもとても大きな影響を残します。
ですから私たちコーチは、コーチングを学ぶ時は以下の内容とじっくり向き合います。
- 何のために、その質問をするのか
- コーチングセッションのどこでその質問をすると、より有効か
- 効果的な質問のために、コーチのマインドをどう整えるか
- 自分が無意識にしている質問は何か、これからどんな質問を自分にするか
- クライアントにカスタマイズした質問を、どうつくるか
などなど。
さて、その質問の力なるものをしみじみと感じたことがあります。
今から10年ほど前、出張で長崎を訪れた時のことです。
3時間ほど余裕ができたので、宿の近くの神社まで散策することにしました。
梅園身代わり天満宮という神社です。
参道で一休みしていると、近所にお住まいとおぼしき女性から声をかけられました。
「どちらから来たんですか?」
さすが観光地の長崎。観光客にとてもフレンドリーです。
「埼玉から来ました」
「まあ、埼玉から! 遠くからいらしたんですね」
ここまでは旅先でよくやりとりする会話です。
しかし、次なる質問は違っていました。
「ここの神社の梅の木、何本あると思う?」
え?!
突然のことに頭の中は一瞬にして真っ白。
考えたくなかったら考えなくてもいいのに、答えたくなかったら答えなくてもいいのに、質問されるとどうしても答えを探してしまいます。
これはもう脳の習性なのでしょうか?
とにかく答えをだすべく集中して考えました。
何本ですって?
見たところあまり広い境内でなさそう。だから案外と少ないかも。
でも神社の名前に「梅園」とついてるからには、思ったよりたくさんあるかもしれない。
少ない本数でも失礼だし、多すぎる本数でも失礼だし、ああ、なんて答えたらいいものか。
えーと、うーん・・・。
私が答えるのを待っている彼女のいたずらっ子のような目つきも感じ、そわそわしてきました。
彼女は微笑みながら教えてくれました。
「18本よ」
えっ、そんなに少ないのか。
なんだと苦笑いましたが、我ながら驚くのは、このエピソードはもう10年も前のことだということです。
そんな以前のことでも、今でもはっきり覚えています。
梅園身代わり八幡宮という名前、あの時の景色、会話、気持ち・・・など。
どうやら「質問されて答えを探し続ける」というプロセスは、それだけ私たちの記憶に鮮やかに情報を残すようです。
仮にあの女性が質問ではなく、最初から教えてくれていたらどうだったでしょう?
「ここの神社ってね、梅の木が18本あるのよ」と。
おそらく「ああそうですか」とあっさり会話は終わり、ここまで覚えていなかったと思います。
もしかしたら、地元の女性に話しかけられたことさえ忘れているかもしれません。
質問されると記憶に残りやすい。
それもかなり。
質問というスキル、これほどまでに人に影響します。
人のパフォーマンスにも大いに関係してきそうな質問というスキルは、探求しがいのあるテーマです。
そこで次回は、質問が人のパフォーマンスに実際にどれくらい影響するかを紹介します。
どうぞお楽しみに!
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