こんにちは。storyIの猪俣恭子です。
コーチングのスキルはそれこそ多くありますが、中でも「質問する」スキルは「聞く」「フィードバック」とあわせて、コアスキルといっていいでしょう。
それは、とってもパワフルなスキルです。
私たちの心に、思考に、とてもとても大きな影響を残します。
『図解 モチベーション大百科』(池田貴将著・サンクチュアリ出版)に「POWER OF QUESTION」として興味深い内容があります。
「イリノイ大学 イブラヒム・シネイたちの実験」として紹介されているものです。
被験者にアナグラム(単語の順番を入れ替えることで別の単語をつくる遊び)に取組んでもらいます。
しかし、その直前の一分間、チームごとに違うことをしてもらいました。
Aチームの人には「私はやる(I will)」と自分に言い聞かせてもらい、Bチームの人には「私はやるかな?(Will I)」と自分に質問をしてもらったそうです。
さて、どちらのチームのほうが多くの課題を解いたでしょうか?
私がこのことを研修で扱う時は、参加者の皆さんに考えてもらい答えてもらいます。
圧倒的に多いのは「Aチーム」。
理由は、宣言効果たるもの。
「自分をその気にさせる」「モチベーションが上がる」「励まされる」などを理由にあげられます。
「Bチーム」と答える方は全くいない時もあれば、一人か二人いるくらい。
その方たちに理由を尋ねると「『自分はやる』と言い続けるとかえってやる気が空回りしそう」などと話されます。
さて、答えは・・・?!
「Aチーム」・・・ではなく、「Bチーム」。
しかも、BチームはAチームより平均して50%多く課題を解いたということだそうですから、いっそう驚きます。
本著ではこのように結論づけています。
「断定よりも疑問のほうが、答えとモチベーションを引き出す助けになる」と。
ここで想像してみてください。
Aチームのように、「私はやる、私はやる・・・」と、一分間自分に言い聞かせたとしたら・・・?
そのうち、こんな声が聞こえてきませんか?
「もしもできなったらどうしよう? どうなるんだろう?」と。
その瞬間、「できなかった」時の気持ちがさっと沸き、プレッシャーを感じませんか?
この気持ちのまま作業にとりかかっても、集中が続きそうもありません。
さて、質問のよいところは、質問されると選択肢が生まれ、自ら「答を選ぶ」という主体的な行為がその瞬間に起きることです。
ということは、Bチームに起きたことはまさにこのこと。
「私はやるだろうか?」と自分に質問すれば、選択肢は自ずと「やる」か「やらない」。
「やる」「やらない」のどちらを選んだとしても、「なぜ私はそう思ったのか」という理由を考えるとよいです。
「やらない」理由を考えた時、例えば「自信がない」とか「やったことがないから不安」と感じたら、さらに次の質問を自分にしてください。
「それって、ほんと?」と。
ほんとうにそうかもしれませんし、そう思っているだけかもしれません。
このように自分がだした答えにすぐ落ち着いてしまうのではなく、ほんの少しでも検証することで「考える力」がより深くなります。
一方、「やれる」という答えを選んだら、「なぜ自分は『やれる』」と思ったのか、その理由をリストにすることをすすめます。
例えば「昔やったことがあるから大丈夫だと思う」とか「やったことはないけれど、落ち着いてやればなんとかなると思う」など。
その言葉は、作業に取り組むときの自分を励まし、勇気づけてくれるものになるでしょう。
結果として、最後まで続ける集中力や継続力をうみだす力にもなります。
宣言効果がまったくないわけではありません。
しかし、質問された瞬間うまれる選択肢とそれらの選択肢から自ら選びとるプロセスそのものが質問の効果です。
自ら選ぶ瞬間が増えるということは、自分で自分の人生を選んでいることも意味します。
そのことは、少しずつ自己肯定感や自己効力感を高めてくれます。
質問の効果たるもの、奥が深いです。
ならば、質問であればどんな質問でもこのように効果的なのでしょうか?
次回はそれを検討します。どうぞお楽しみに。
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