こんにちは。storyIの猪俣恭子です。
コーチングのスキルはそれこそ多くありますが、中でも「質問する」スキルは「聞く」「フィードバック」とあわせて、コアスキルといっていいでしょう。
それは、とってもパワフルなスキルです。
私たちの心に、思考に、とてもとても大きな影響を残します。
しかし、質問であればなんでも効果的なのでしょうか?
これは検証する価値があります。
同じ状況下でも、質問が異なると人のモチベーションや行動への影響がどう変わるかを知ることは、質問を理解するうえでとても大切なことです。
そこで今回は、「なぜできないの?」「どうしたらできる?」「あなたにとってどんないいことがあるの?」の3つの質問を使って検証します。
最初に次のことを準備してください。
「やろうやろうと思って、やっていないこと」を一つ思い出してもらえますか?
例えば、「本棚の整理をしようと思っていて、まだしていない」、「英語の勉強をしようと思っていて、まだ取り組んでいない」、「スポーツクラブに週に一回は行こうと思っているのに、一ヶ月に一回くらいしか行けていない」「レポートを作成しないといけないのに、まだ手をつけていない」など。
やろう思っていてやっていないこと。
一つ思い出しましたか?
そうしたら、次の質問をしてください。
「なぜできないの?」と。
忙しいから? 時間がないから? 面倒だから?
あれこれと理由は浮かぶものの、これといった明快な答えは得られず、結局「本当はやる気がないからかもしれない」と、それ以上の答えにたどりつきません。
さらに、このように上手くいっていないことに「なぜできないの?」と質問されると、責められているようにも感じます。
そのうち考えることから逃げたくなってきます。
事実、できていないことに「なぜできないのか?」と何回も聞かれると、言い訳が上手な人になっていくと言われています。
次に試すのはこの質問。
「どうしたらできる?」
今度はどうでしょう?
「どうしたらできる?」と聞かれれば、「できる方法」に思考が向きませんか?
「やる日時を決めたらできそう」
「まず30分くらいからやってみよう」
「一人でやるよりも友人と一緒にやってみよう」
などのように。
「なぜできないの?」の質問に比べ、行動するためのアイディアがたくさん浮かんできます。
それにそのアイディアを試してみたくなるでしょう。
「なぜできないの?」と質問されるよりも、ずっと前向きな気分になれそうです。
最後は次の質問です。
「あなたにとってどんないいことがあるの?」
私は友人にこの質問をしたことがあります。
彼は健康診断を受けなくてはと思いながら先延ばしにしていました。
「健康診断を受けることは、あなたにとってどんないいことがあるの?」
すると彼は「自分が健康であるために必要だから」と答えます。
当然のことです。
さらに聞きました。
「自分が健康であることが、どうしてあなたにとって大切なの?」
と。
えっ? 彼は虚を突かれたような驚いた表情をして、ぐっと考えこみました。
しばらく沈黙が続いた後、それまでとはまるで違う真剣な眼差しでこう言いました。
「去年、息子が生まれたんだけど、息子の前ではいつまでも元気な父親でいたい」
これこそが彼が健康診断を受ける真の目的だったのです。
翌週、彼は人間ドックを申し込みました。
停滞していた行動が促されたのです。
人は意味を求める傾向があります。
「それをすることの目的は何? 何のためなの?」
理由がわかると迷いがふっきれます。
会社のため? 職場のため? 上司のため? お客さまのため?
しかし、何よりもやろうとしていることが「自分のため」にどうつながるのかが、最も重要なのです。
このように、質問が違うだけで得られる答えは全く様変わりします。
ところで、「なぜできないの?」「どうしたらできる?」「あなたにとってどんないいことがあるの?」の3つの質問のうち、どれがモチベーションや行動促進に最も効果的でしょうか?
あなたはどう思いますか?
どれがよいというよりも、これら3つの質問をバランスよく使っていることが望ましいと私は思います。
いつも「なぜできないの?」とばかり質問されると、そのうち自己否定してしまいそうです。
いつも「どうしたらできる?」とばかり質問されると、解決策ばかりを考えるデジタル思考の人になってしまいそうです。
「あなたにとってどんないいことがあるの?」とばかり質問されると、常に自分の利益を優先しがちな人になってしまうかもしれません。
いつもいかなる時も同じ質問ばかりでなく、異なる切口からの質問をまんべんなく使えるようにしておくこと。
そうなっていると、ものごとの捉え方が固定されず、いつも広い視野で考え感じられるようになります。
自由な生き方というのは、そういう状態から生み出されるのではないでしょうか。
全く異なる切口の三方向からの質問を用意してみる。
そういう意味では、「質問だって三本の矢」ですね。
さて次回は、私が「ある質問」によってとても救われたエピソードを紹介しつつ、質問のさらなる可能性を探求します。
どうぞお楽しみに。
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