こんにちは。storyIの猪俣恭子です。
コーチングのスキルはそれこそ多くありますが、中でも「質問する」スキルは「聞く」「フィードバック」とあわせて、コアスキルといっていいでしょう。
それは、とってもパワフルなスキルです。
私たちの心に、思考に、とてもとても大きな影響を残します。
だから、私たちコーチは「質問のスキル」を時間をかけて学びます。
「質問の種類」をたくさん備えようと努力します。
会話において、どこでどのように質問をすると、こちらの意図どおりに効果的にその質問が働くのかを考えます。
しかし、この発想を変えて「質問をする」側から「質問をリクエストする」側になってみると、何が起きるでしょう?
このことも「質問上手の道」につながります。
今日はそのことを実感したエピソードを紹介します。
先日、自宅近くのJTBに旅行の申し込みをしに行きました。
今回の目的地は京都。
京都のどこに行くかは、現地に行ってしまえばどうにでもなります。
しかし、迷ったのが宿です。
今まで泊ったところがない宿にしたいと思い、12月という時期を考え、思い切って温泉宿にするか、それともクォリティの高さや建築美を感じ居心地がよさそうなホテルにするか・・・。
温泉宿は嵐山。ホテルは東山。
二択というのは、案外と決められません。
宿泊費も同じくらい。
それぞれの宿がある場所も決め手になりません。
一体何を基準に決めたらいいものか?
自問自答を試みます。
「それぞれの宿のウリはなんだろう?」
それまで考えていた範囲でしかアイディアが浮かばず。
「他の質問は何かないかな。どっちがいい?」
どっちがいいか迷っているから考えているのに、この質問、全く機能せず!
「自問自答の質を上げることが人生の質を上げます」なんてかっこいいことをクライアントや研修受講者に伝えているのに、自分じゃできているつもりが実際はこうだとは・・・。
決断は早いほうと自負がある私ですが、このままでは堂々巡りです。
カウンターで腕組みをして考えこんでしまいました。
ああ、このままでは時間がただたつだけ。
背中越しには、順番待ちをしているお客さんが、椅子に座れずに立ちながら待っている人もいるくらいに大勢います。
「まだ自分の順番にならないか」という無言のプレッシャーさえ感じます。
苦し紛れに窓口担当の方に声をかけました。
「すみません。お願いがあるんですが」
「はい、なんでしょう?」
「どっちの宿にするか決められないんです。東山のほうにするか、嵐山のほうにする。私が決められるように、何か質問していただけませんか?」
担当者は小声で「なるほど」とつぶやき、パンフレットをじっと眺め、その間およそ五秒程度だったでしょうか。
パンフレットから目を離し、こう質問しました。
「温泉でゆっくりくつろぎたいですか? それとも、お食事を楽しみたいですか?」
これといって、目新しい質問ではありません。
しかし、「あれ?」と思いました。
なぜ、東山のほうのホテルを「お食事を楽しみたい」と表現したのでしょう?
それをそのまま聞いてみると、そのホテルは食材や調理など食事に力を入れているとのこと。
それには気づきませんでした。
温泉で楽しむか?
それとも、食事で楽しむか?
時間に迫られて答えを出さねばならない時は、それこそ考えることにぐっと集中します。
そして、ひらめきました。
それは突然やってきました。
温泉はほかでも十分楽しめる。
こういっちゃなんだけど、嵐山の温泉よりも泉質のよい、また雰囲気のよい温泉地は他に多くあるし、別の機会に温泉は温泉で楽しめるのでは?
それに、もともと今回の旅では夕食を少し豪華にしたいと思っていたんだっけ。
「決めました。東山のほうのホテルにします。手配をお願いします」
この経験から学びました。
よくセルフコーチングとか、自分にもよい質問を・・・と聞きますが、やはり第三者から問われる質問から得られる気づきは超えられないということを。
どこにでもあるような質問であっても、そこには自分の枠にはない相手の世界観を反映した情報がのっています。
今回の場合は、「食事を楽しみたいですか?」がそうですね。
ということは、一人で考え込むことに時間を費やすよりも、身近な誰かの力を借りて質問してもらったほうが現状を打開できることは、思っているよりも多くあるかもしれません。
問題に直面した時、課題を解決している時、何か煮詰まった時などは効果的です。
私のように、「〇〇のために何か質問してくれない?」と軽やかに質問をリクエストしてみたらいかがでしょうか?
よいことは他にもあります。
さきほどの窓口担当者の方に言われました。
「お客さまから質問してと言われたのは、初めてです。
でも、猪俣さまのお役にたててよかったです」
と。
質問をリクエストされることは、相手にしてみたら、その瞬間、自分が頼りにされていると感じることです。
自分の存在価値さえも感じられるでしょう。
それはお互いの信頼関係を深めることにも一役かうことにもつながります。
しかし、こう上手くいくためには、条件が一つあります。
それはとても重要なことです。
最初から質問をあてにしないことです。
最初はとことん自分で考えることです。
それでも答えがでなかったら、誰かの力を借りる。
答えを「絶対に自分で出すんだ」というコミットがあるからこそ、他者の質問が効果的に自分に影響するのですから。
自分一人でなんでもできる、と思うことなかれ。
他者からの質問は、自分の内側で反芻する質問の何倍もの効果あり、ですね。
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