こんにちは。storyIの猪俣恭子です。
自分にとって耳が痛いことを言われた時、弱点を指摘されているように感じ、心の中でこんな思いがこみ上げてくることはありませんか?
「私だって忙しかったんだから」
「少し言い間違えただけじゃない」
「そんなことを指摘されても、私も上司からいろいろ言われて困っているのに」
しかし、そういう時こそあなたの真価が問われています。
その時にあなたがどのような表情や態度をとり、何を言うかで、部下はあなたがどれくらい信頼できる人なのかを測っているからです。
これに関してとても印象深い経験があります。
銀行に勤めていた時のことで、後輩のAさんが上司のKさんに報告をしていた場面でそれは起きました。
Kさんは相当忙しかったとみえて、Aさんが報告をしているにも関わらず、書類をぱらぱらとめくりながら「ああ、うんうん」と相づちは打つものの、Aさんのほうを全く見ません。
その態度から「わかっているからもういいよ。その話は今さら聞くまでもない」という気持ちが伝わってきました。
Kさんが席を外してから後輩に「大丈夫?」と声をかけると、
「Kさんっていつもこうですよね。余裕がないんですよ。仕方がないです」
と。
しかしムスッとした表情からかなり腹立たしく感じているのは明らかでした。
「まずい、このままだと2人は険悪になってしまう」。
そう思った私は、その日の夕方、職場に誰もいないのを見はからいKさんに声をかけました。
「Kさん、今日、Aさんから報告を受けている時、作業をしながら聞いていましたよね。
それもAさんの話が最後まで終わっていないのに、途中で席を立ったりして。
あれでは『聞いてもらっている』感じが全くしません。
Aさんのほうを見てちゃんと話を聞いてくれませんか?」
Kさんは軽く目をつぶり、頷きながら耳を傾けていました。
しかしながら、眉間に縦じわ、腕組み足組みの態度を見ているうち、うるさい部下と思われていたらどうしよう、言わなければよかったと不安がこみあげてきました。
数秒の沈黙ののち、Kさんはこう言ったのです。
「本当にその通りだな。わかった。
これからは気をつけるよ。言ってくれてありがとう」
たったそれだけでしたが、心底思いました。
「さすがKさん。やっぱりこの人は信頼できる人だ。」
その後、その言葉どおりにKさんの態度は確かに変わりました。
なぜ、私はあの時Kさんにこのようなことが言えたのでしょうか?
いくら「はっきりとものが言える性格」だからといっても、誰それ構わず言えるわけではありません。
あらためて考えてみると、そもそも最初からKさんを信頼していたからだと気づきました。
Kさんだったら「きっとわかってくれる」と。
そのとおりKさんは、わかってくれる人だったのです。
耳の痛いことを言われたとしても、別に部下はあなたを責めているわけではありません。
あなたをできない人と思っているわけでもないし、役に立たない人と思っているわけでもありません。
あなたの評価が下がるわけでもないし、優秀さが失われるわけでもありません。
そういう時は、こう考えたらどうでしょう?
それは指摘されているのではなく、大切な情報を教えてもらっているのだと。
あなたとの関係がよりよくなるための、職場がよりよくなるための。
言い訳の一つでもしたくなる時は誰でもあります。
でも言い訳しない。
最後まで部下の言い分を聞く。
部下もリスクを感じています。
もしもあなたが気を悪くしたらどうしよう。
自分の印象が悪くなったらどうしよう。
これからの関係が悪くなったらどうしよう。
内心はドキドキしてています。
だからこそ勇気をもって伝えてくれたことに、感謝の気持ちを届けてあげてください。
「正直に言ってくれてありがとう」と。
そんなあなたの態度は、部下を「思い切って話してよかった。わかってくれて嬉しい」とほっとさせ、安心させます。
あなたに一方的にお願いするだけではなく、自分も何か変えられることはないかと今後の可能性について考えるようにもなります。
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