こんにちは。storyIの猪俣恭子です。
脳科学者の茂木健一郎さんは、そもそも脳の働きの本質は「自発性」であり、脳に何かを強制することはとても難しいと言っています。
自分が選んでいるという感覚があって初めてドーパミン(神経伝達物質の一つ。「快感」を生み出す脳内物質)が分泌され、それが高い能力向上につながるのだそうです(『脳を活かす勉強法』茂木健一郎著/PHP研究所)。
確かに、他人から「ああしなさい」「こうしたほうがいい」と言われて動くよりは、自分で納得した上で動いたほうが、目的に到達できる可能性は高くなります。
やる気も出ますし、強制的にやらされているより何倍も充実感や楽しさも感じられます。
この「自発性」を高めるコミュニケーションがコーチングです。
なぜコーチングではそれが可能なのかというと、そもそも「相手の内側にも答えはある」と信じて相手に関わっているからです。
人は自ずと相手から期待されるように振る舞います。
もしも相手に対して、「この人は自分で考え、自分で決めることができる」と信じていれば、それが伝わって、相手は自ら自発性を発揮するようになるでしょう。
反対に、「この人は私が考えなければ、自分で考えることも決めることもできない」と思っていれば、それは間違いなく相手に届きます。
その状態が続けば、相手は
「この人は自分のことを考えることも決めることもできないと思っている。だったら、自分の代わりにこの人が考えて決めてくれるのを待っていればよい」
と、受け身で待つだけの人になってしまいます。
相手の「自発性」を高めるために大切なことがもう一つあります。
それは、むやみにアドバイス(助言・忠告)しない、ということです。
これについて興味深い話があります。
私たちは、相手から「ちょっとアドバイスしてもいいかな」という言葉を聞くと、それだけでストレスを感じ、コルチゾールというホルモンが多量に分泌されるそうです。
そうなると、脳の記憶形態に深く関係する「海馬」が萎縮されることが観察されています。
アドバイスする人とされる人の両者間の優位・劣位を客観的に見ると、アドバイスをする人のほうが「偉い人」のように私たちは感じてしまいます。
人は相手と対等な関係でいる状態で、最も能力を発揮します。
それに自分が相手よりも下だと感じる状態が続くと、さすがにつらいものです。
ですが、職場でのことを振り返るに、部下が問題を抱えていたり悩んだりしていると、私たちはアドバイスの一つや二つ、どうしてもしたくなります。
まして「どうしたらいいですか?」と相談されれば「いい答えを言わねば」とスイッチが入り、一気にアドバイスモードに入ります。
相手よりも優位に立ちたい、という気持ちもあるかもしれませんが、それよりも部下の役に立ちたい、貢献したいという気持ちもそうさせていると思います。
では、効果的なアドバイスの伝え方ってあるのでしょうか?
何もアドバイスをしてはいけないというわけではありません。
問題は、タイミングなのです。
相手がアドバイスを本当に望んでいることがわかったら、のびのびとアドバイスしちゃいましょう!
しかし、効果的なアドバイスの伝え方のためには、次のことに要注意。
ながながと話しすぎないことです。
まず一分くらいでいかがでしょう。
そして必ず次のことを聞いてください。
「今の私のアドバイスを聞いて、どこが参考になった?」
(「感想聞かせて」「どう思う?」)と。
アドバイスを言いっぱなしにしないで、それを聞いてどうだったのかを相手が話す「ゆとり」をつくってあげてください。
よい関係は、一方向ではなく、そうした双方向から生まれます。
こう書いている私もアドバイスをしていることになるのでしょうか(笑)?
では聞きましょう。
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