こんにちは。storyIの猪俣恭子です。
「質問」には大きな力があります。
相手から「質問」されたら、私たちはその「答え」を考えないわけにいきません。
「梅園身代わり天満宮(長崎県長崎市)」を訪れたときのことです。
地元の方に「ここの梅の木は何本あると思いますか?」と聞かれたことがありました。
えっ? 何本?
懸命に考えて何度か答えましたが不正解が続き・・・。
ようやく「20本」と教えてもらいました。
それから数年が経ちますが、今でも梅園身代わり八幡宮がどんなところだったかをはっきり覚えています。
長崎市には、他にも有名な観光スポットがいくらでもあるにもかかわらずにです。
理由はわかっています。
質問され、答えを探すために考えたことで、その場面の記憶が鮮明に残ったからです。
『脳が教える! 一つの習慣』(ロバート・マウラー著/講談社)によると、脳は変化を恐怖として避ける一方、創造性をつかさどる大脳新皮質というところは質問を好む性質があるそうです。
つまり、質問は脳を目覚めさせ、喜ばせる、と。
たとえばかばかしい質問だろうと奇妙な質問だろうと、脳は質問を受け入れ、じっくり考えるのが好きなのです。
確かに「これは、〇〇です」と教えるよりも、「これは〇〇ですか?」と質問の形で話しかけられたほうがじっくり考えるのはもちろんのこと、自分で答えを導きだそうとします。
この特徴を生かせば、部下に問題をより深く考えてもらったり、大切なことを心に残してもらったりすることができます。
自分のことを言うならば、私は社会人になった最初の2年間は「考えながら仕事をする」ということは、さほどありませんでした。
上司がよりよい判断ができるように、現場で起きている情報をいち早く上司に届けることが自分の役割だ、と思っていたからです。
ところが3年目の春に異動した職場の上司は違っていました。
課の会議が終わったあとのことです。
会議のテーマは、新入社員の育成についてでしたが、そのときの上司との会話は今でも覚えています。
「福田さん(私の旧姓です)は、どう思うの?」
「Kさんと同じ意見です」
今までの上司でしたら、これで済んでいました。
しかし、
「Kさんと同じです、じゃなくて、福田さんはどう思うの?」
「えっ? 私ですか? えっと・・・」
「あなたがどうしたいのか、それがなければ、福田さんがこの課にいる意味がないよ」
プレッシャーを感じました。
考えがまとまらず、苦しく感じました。
しかし、上司の期待に応えたいという思いも手伝い、その質問をきっかけに答えを探し続けました。
そののちも、上司は繰り返し私に質問しました。
「あなたはどう思うの?」と。
自分の考えを自分の言葉で上司に伝えられるまで、ゆうに一年はかかりました。
長い間、先生や上司や先輩の話を「聞く」ことに慣れてしまった人は、自分にも意見があることを忘れてしまっています。
心の中には「答え」はあっても、どのように表現すればいいのかわからない人もいます。
しかし、実はいい「アイディア」を秘めていることが多いのです。
それを信じて、質問をしてみましょう。
もしも、部下が「わかりません」と返すようであれば?
「じゃあ、明日また聞くから教えてくれる?」と笑顔で返してみてください。
きっと部下は、答えを探すことを学びます。
部下の内側からどんな答えが出てくるのか、その沈黙を楽しんで、じっくり味わいながら待っていてあげてください。
とはいえ、期待した答えが必ずしも返ってくるわけではありません。
そうであっても、決してがっかりしないことです。
あなたの「質問」が刺激となって部下の内側からでてきた、かけがえのない答えなのですから。
最初に出てきた「答え」を鵜呑みにしないことも肝要です。
答えは一つだけではありません。
部下の内側には、まだ話していない答えが多くあります。
それらの答えは、話しながら記憶の底から思い出されます。
「この前、聞いたし・・・」と、既に問いかけた質問であっても、何度となく繰り返し質問を続ける価値はあります。
ただし、部下があなたと一緒にいて安心感を抱いていなければ、「質問」はただの「詰問」にしかなりません。
部下への信頼と期待をのせた「質問」は、部下の「考える力」を目覚めさせます。
さあ、あなたは部下に何を質問しますか?
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