こんにちは。storyIの猪俣恭子です。

働いていれば、相手に行動を変えてほしいと思うことは、誰にでもあるでしょう。

例えば、

名前をよばれたら「はい」と、返事をしてほしい
席を立つときは、椅子を戻してほしい
もっと明るく、はきはきと挨拶してほしい
報告は、結論から話してほしい

・・・など。

できれば「言われる前に部下が自分で気づいて、自分で直してくれたらどんなにいいだろう」とも思うのではないでしょうか。

以前、我が家でこのようなことがありました。

夫から

「お願いしていた書類を、出してほしい」

と言われましたが、私は家事に気を取られ、なかなか応えられませんでした。

「僕をないがしろにしないでよ」

不意に言われ、びっくりしました。
何をもって、そんなことを言っているのでしょう!

「そんなことないでしょ」

「いや、そんなことあるって!」

しばらく押し問答を繰り返したあと、彼は言いました。

「頼んでおいた書類を出してほしいって、10回声をかけたのに、9回、無視したじゃない」

確かに彼は私に何回か声をかけていたけれど、10回も言っていただろうか?
それはそうとして、10回声をかけて、9回無視されたことが事実だとしたら「ないがしろにされた」と思うのも当然・・・と、なぜか妙に納得したのでした。

押し問答はそこで終了。
私は苦笑いをして作業の手をとめ、彼に書類を渡しました。

事実を知ると、どうやら人は自分の行動を変えられるようです。

もしも彼から

「あなたは、僕をないがしろにしているよ。それはよくない態度だよ。改めてよ」

と言われていたら、どんな展開になっていたでしょうか。

おそらく

「あなただって、もっと私にわかるようにはっきりと言えばいいのよ」

と感情的になって喧嘩していたかもしれません。

コーチングのスキルのひとつに「フィードバック」があります。

「相手が目標に向かう軌道を修正するために、相手の言動や行動に対して、事実を伝える」

ことです。

伝えるときには、「良い」「悪い」という伝える側の判断、評価、アドバイスはそこに含みません。

見えたことや聞こえたこと、感じたことの「事実」を相手に返す、伝えるのがフィードバックです。

私たちは事実を知ると、それを情報として今の自分の状態を把握できるようになります。

望む状況・状態に向けてとるべき行動を自ら選び、なおかつ行動の修正もできるようになります。
夫が私に伝えた内容も、まさにフィードバック。

フィードバックにはそれだけの効果があります。

さて、ある会社の社長からため息まじりに相談されたことがありました。

「うちの経理のYさんは、一生懸命なのはわかりますが、落ち着きがなくて困っています。
電話応対のとき、話が終わるや否やガチャンと受話器を切るんですよ。
電話の向こう側のお客さまに聞こえやしないかと、とてもひやひやします」

ベテラン社員のYさんは、勤続年数35年。
愛社精神が高く、職場のムードメーカーにもなっている方だそうです

それだけに、社長といえども日常のささいな態度について注意しにくいとのこと。

どのようにYさんに伝えれば、Yさんは気持ちよく応じてくれるでしょうか?

次回は、そのことを「フィードバック」のスキルを使ってどのように伝えられるのかについて、みていきましょう。