こんにちは。storyIの猪俣恭子です。

私たちは、日常生活でも多くのフィードバックを活用しています。

鏡はわかりやすい例です。
鏡に映った自分の髪型、顔色、表情、身だしなみ、姿勢を見ては、望ましいように修正することを誰もがしています。

「寝ぐせがあるから、直そう」
「髪の毛が伸びてきたから、そろそろ美容院に行こう」
「顔色が悪いな、今日は早めに休もう」
「表情がかたいから、笑顔をつくろう」
「スカートからシャツが出そうだから、ちゃんと入れよう」
「猫背になってるから、背筋を伸ばそう」

・・・などのように。
鏡は、事実を事実として私たちに返すことしかしません。

コミュニケーションにおけるフィードバックは「相手が目指している目標やビジョン」をお互いに共有していることで、ずっと伝えやすくなります。

相手にとってほしい行動もお願いしやすくなります。

さて、前回の事例です。
念のためにもう一度あげますと、次のような内容でした。

ある会社の社長からため息まじりに相談されたことがありました。

「うちの経理のYさんは、一生懸命なのはわかりますが、落ち着きがなくて困っています。
電話応対のとき、話が終わるや否やガチャンと受話器を切るんですよ。
電話の向こう側のお客さまに聞こえやしないかと、とてもひやひやします」

ベテラン社員のYさんは、勤続年数35年。

愛社精神が高く、職場のムードメーカーにもなっている方だそうです。
それだけに、社長といえども、日常のささいな態度については注意しにくい・・・とのこと。

どのようにYさんに伝えれば、Yさんは気持ちよく応じてくれるでしょうか?

私からのアドバイスを参考に、社長はYさんと話をしてみました。

「Yさんは、どんな電話応対を目指しているの?」

「Yさんが仕事をするうえで、大切にしていることって何?」

「Yさんは、お客さまにどのような印象を残したいの?」

すると、Yさんは

「お客さまから誠実で信頼できる人だと思われたい、Yさんだから安心して任せられる、と思われたい」

と答えたそうです

それを聞いたうえで、社長は次のようにフィードバックしました。

「Yさんはそう思いながら仕事をしているんだね。ありがとう。
苦情にもすぐに対応してくれるから、とても助かっている。
この前、お客様がYさんはとても感じがいいとほめていて、私も嬉しかった。

ところで、一つだけお願いがあるんだ。いいかな。
Yさんが電話のあと、受話器を置くときに「ガチャン」って音がするんだ。
その音を聞くたびに、私はお客さまにも聞こえないか・・・とひやひやするんだよ。
静かに、切ってもらえるかな。

これからも頼りにしているよ。Yさんだからこそ気づくことも多くあるから。
そういうことがあったら、遠慮しないで言ってきてほしい」

Yさんは「しまった」と恥ずかしそうな表情を一瞬したそうですが、社長とのやりとりのあとは、静かに受話器を置くようになったとのことです。

その後、Yさんは社長に言ったそうです。

「長く働いていると、だんだん惰性でやってしまうことが多くなります。
これからも、気づいたことがあれば教えていただけますか?」

と。

社長はこの経験を振り返り、言いました。

「社員の目標や目指していることがわかっていると、フィードバックがしやすいね。

口うるさく言うのではなく、あなたのために必要な情報を提供している・・・
というスタンスになれるからだろう。

社員に、とってほしい行動を以前に比べて楽に伝えられるようになったよ。」

あなたは、いつ、誰に、どんな目的でフィードバックしますか?

部下が目標を必ず達成する人であることを信じ、自らよりよくなっていく人であることを信じれば、そのフィードバックは必ず、部下にポジティブな影響を残します。