こんにちは。storyIの猪俣恭子です。

「あなたはどうありたい?」
この質問に対し、私は長いこと苦手意識を持っていました。

あまりにも相手に迫る質問です。
逃げ道がなくなる感じがします。

だからこそ、その人が本当に使うべきところにエネルギーを向けられるようになります。

私がコーチングの仕事を始めて16年。
ようやく、この苦手意識から開放されてきました。
この問いを相手にためらいなく、できるようになりました。

この問いを受けた相手にどのような変化が起こるのかを、今日はお伝えします。

飲食店の店長をしている友人は、調理長への不満をかなり抱えていました。

「うちの調理長の腕はいい。
でも、職人気質で他のスタッフとコミュニケーションをとろうとしないの。
育てるっていう意識がないのよね。周りのスタッフも距離をとってしまっていて…。
その調理長が辞めたら、うちの店はどうなるかと想像しただけで、とても心配。」

そのお店の食事は非常に評判がよく、お客さんもSNSにアップされるほどのもの。
料理が店の顔であることは必須ですから、友人の心配もよくわかります。

「どうなればいいと思っているの?」

「調理長と他のスタッフのコミュニケーションがよくなればいいと思う。
他のスタッフたちは自分から進んで教えてもらうように動いてほしい。
調理長には、もう少し他のスタッフに声をかけてほしい。」

「そうだよね。
ねえ、そうなった時にあなたはどうなっていたいの?
何をしていたいの?」

「え?」

「今、話してくれたのは、相手にどうなってほしいかということだよね。
相手があなたが望むように考え方や行動が変わった時に、自分は今のままでいいっていうこと?
それって、相手が成長したり変わってもあなたは以前のまま、ということじゃない?
それでいいのかな?」

「ああ、うーん…。」

「相手にどうなってほしいかも大切にしつつ、で、あなたはどうなりたいの?」

「私が?」

「そう。」

「そうだなあ。わからない…。」

しばし沈黙が流れた後、友人は「店のこれからの不安がなくなればいい」と言います。

この観点は、「マイナスからの回避」に基づいて描かれた未来のイメージです。
「起きてほしくないことが避けられた」未来。

こういうビジョンの場合、それが達成されると、本人のその後のモチベーションは続きません。

よくありがちなのは、「ここで目標を達成しないと、ボーナスが出ない。だから頑張ろう」というようなもの。
達成したら気が抜けてしまい、それまでとっていた行動を「ぴたり」とやめてしまいます。

描いてほしいのは、「プラスの追求」に根ざして描かれた未来です。

「目標を達成し、メンバーとねぎらいあい、お互いの連帯感がさらに強くなっている」

のように。

このことを話すと、友人はさらに「うーん」と考え込んでしまいました。
「ああでもない、こうでもない」と考えあぐね、2分ほど時間がたったあと・・・。

「私は、美味しければそれでいい!」

「え? 何?」

「うちの店でだす食事がお客様にとって美味しければそれでいい、調理長が辞めて味が変わったとしても、美味しければそれでいい!
調理長以外のスタッフも調理長ほどではないけれども、腕は確かだから大丈夫。」

「調理長が他のスタッフを育てようとしない」という囚われから、すっかり開放された友人の姿がそこにありました。

会話を始めたころのもやもやした感覚はどこへやら、「すっきりした」と言います。

以前は、「どうしたら調理長が他のスタッフとコミュニケーションをとってくれるか」ばかりを考えていましたが、今の友人は調理スタッフ全員に対し、目標達成のための面談を一人ひとり、行っています。

「周りがどうなってほしいかに加え、あなたはどうなりたいの?」という問いのインパクトは相当あります。

そこには、真の課題は何かを見せてくれるだけの力が宿っています。

あなたはどうなりたいの?
私も自分自身に意識して問いかけ続けます。