こんにちは。storyIの猪俣恭子です。

以前、会社員で社内講師だった時の研修は、非常に上手くいっていました。
受講者との信頼関係が既にできていたからです。

私は人事部なのですから、社員は「よき顔」を見せて当然。

なのに、私は「講師にすごーく向いている」と勘違いしてしまっていました。

現在は社外講師。

研修の場では、受講者との間に関係性はできていません。

「この講師、誰?」
「どれくらいできる人なの? まあ、お手並み拝見ってとこかな。」

品定めの視線がからみつきます。

企業の人事担当者からは、自分たちではなかなか言えないこと、変えられないことを社外講師に頼むわけで、ミッションの難易度は半端ありません。

さて、私が社外講師デビュー間もなかった頃の話です。

三日間のコーチング研修。
対象者は管理職。

受講者の一人が時折、目をつぶって私の話を聞くわけです。

寝ているわけじゃないですよ。
どうやら吟味している様子。

研修終了後、「ちょっといい?」と声をかけられました。
連れられたのは、研修会場の中庭。
受講者の皆さんから丸見えの場所です。

そこで、その方は私にこう言ったのでした。

「猪俣さんが話していたことって、本当に猪俣さんが心から『そうだ』って信じていることなの?
本当に心から大切なことだと思って、話していたの?」

さすが、図星…。

実はその研修は、「メイン講師のスクリプトを、同じようにやってほしい」…とお客様からオーダーがあったもの。

私は暗記にいそしみ、頭の中のスクリーンにセリフを映し出しては、一生懸命にそれを話していたのでした。

「講師たるもの、人前に立つ時は『自分が話すことは、受講者にとって絶対に役立つものだ』と信じて話さなきゃだめだ!」

と、お叱りを受けたのでした。

情けないやら、恥ずかしいやら。

帰宅後、夫に事の顛末を話すと

「普通は講師にそんなことを言わないだろう。変わった奴だ!」

と怒ってくれました。

しかし、はたと思ったのです。

そうです。
普通はそんなことは言わないでしょう。

その「普通はしない」ことを私は経験できたのです。
これには、どんな意味があるでしょう!

それからは、受講者がどんな人たちであれ、人前に立つ時には、用意したコンテンツに絶対的な信頼を含めて、デリバリーしています。

研修受講者は、会社からの指示で受講しています。
それでも、

「今の仕事が上手くいく何かが得られるなら、参加したかいがある」

…という期待も持っています。

今月から、ある企業のプロジェクトに参画します。

組織のリーダーシップ開発で、参加者は部長たち。
企業からのオーダーを果たすべく、仲間の講師とともに力を尽くします。

研修、トレーニング、コーチング…。
全てを駆使して、受講者のプレゼンスがグレードアップするように、仕掛けます。

「講師たるもの!」

あの人は、今の私を見て、何を言うでしょう。
あの人は、どこで何をしているでしょう。

私にそんなことを言ったことも忘れて、のん気にしているかもしれない。
そんな感じがします(笑)