こんにちは。storyIの猪俣恭子です。

数年前のことです。
日本経済新聞夕刊の『就活のリアル』に興味深い内容がありました。

就活ジャーナリストの海老原嗣生さんが書かれた記事で、見出しにはこうありました。

欠点や苦手な事にネタがある

以下、記事を紹介します。

私が教えていた京都の大学で、こんな女子学生がいた。

「欠点は何かと言われても、私は欠点だらけで、とにかく心配性。だから緊張してしまい、うまく人と話せない。引っ込み思案なんです」

私は、その彼女の心配性で気弱な「良い話」を知っていた。

彼女は大学のゼミで花見をするときに、幹事に指名され、また不安のどん底に落ちてしまったのだ。

ここでどうしたかが彼女らしい。

まず花見の3日前に下見に行き、午前11時なら場所取りができるとわかる。
続いて2日前、午後0時30分に行ってみると、場所はもう埋まってしまっていた。

そこで前日の午前11時30分に再々訪し、この時間ならOKと判断。
さらに、お目当ての桜の位置を測り、大中小3タイプのビニールシートの配置図も考え、どれが何枚くらい必要かを把握し、取り揃えていたのだ。

その話を彼女に思い出させ、心配性で気弱と言わずに、「心配性なので準備を万全にするよう心掛けている」と話すように勧めた。

彼女はいくつかの企業から不採用となったが、最終的に中堅だが知名度が高く人気の通信販売の事務職として採用された。

その会社が彼女を採用したのは、「地味でも、こういう堅実なタイプが、うちの会社にとてもあっている。書類や商品の山の中で仕事をしていくのだから」という理由だったそうだ。

なるほど。「心配症で人とうまく話せなく引っ込み思案」という欠点や苦手なところから、自分ならではの新しい「強み」が生まれるのですね。

そういえば、友人にもこれと似たようなことがあったことを思い出しました。

彼女には、人から聞いた話をなかなか覚えられないところがありました。

「えっと・・・。何ておっしゃいましたっけ?」

このように既に聞いたことをもう一回聞き直すなど、人とのやりとりで冷や汗をかくようなことがたびたびあったそうです。
彼女もコーチングの仕事をしていますので、このことは仕事をするうえで命取りになります。

なんとかせねばと真剣に考えた末に彼女が取り組んだのは、聞いた話をとにかくメモにとることでした。

ありきたりと思うかもしれませんが、彼女の場合、このメモをとるレベル感がすごかったのです。

「私は人の話をよく覚えられない」という自覚がありますから、相手が話した内容一言一句まで書きとったそうです。

コミュニケーションを鍛えるトレーニングと捉えて、ご主人のご両親との会話でさえメモをとったとか。
「スーパーで醤油を買ってきて」のような、ささいなやりとりでさえも。

それを続けた結果は・・・?

彼女がオンラインセミナーのファシリテーターを担当したときに、見事に成果がでました。

参加者が発言した内容を整理する際に、「〇〇さんが〇〇〇と事例を紹介され、続いて、〇〇さんが〇〇〇と体験を話されて・・・」とそれまでの対話のやりとりを見事に再現したのです。

ある参加者の方が「驚きました。よく私たちの話を覚えていますね」と感嘆の声をあげたほどでした。

こうして彼女は、セミナー参加者から信頼を得ていきました。

苦手に感じることでも、なんとかしようとあきらめずに取り組んでいるうちに、そこから新しい「強み」が芽生えてくる可能性があることを彼女は教えてくれました。

得意なこと、好きなこと、褒められること。
大方、私たちはそこに「強み」があると判断します。

しかし、実は苦手なことにも私たちの「強み」は潜んでいます。

ひっそりと潜んでいる「強み」は、「苦手」なことにあきらめずトライし続けた人だけに訪れるご褒美なのかもしれません。