こんにちは。storyIの猪俣恭子です。

研修で「どんな時にモチベーションが上がりますか?」と聞くと、たいてい「褒められた時」という答えが返ってきます。

では、「あなたが部下を褒めるのは、どのような時ですか?」と聞くと、

「ちゃんと結果が出た時」
「いい意見や内容のいい企画書が出来た時」
「予定より早く仕事が終わった時」

など多くの方は部下が結果や成果をだした時と話されます。

ところが目に見える結果や成果は、日頃の職場でそう毎日起こるものではありません。

結果だけを追求しすぎると、部下の立場からすれば

「こんなに頑張っているのに、こんなに努力しているのに、それはわかってくれないのか」

という気持ちになります。

誰でも「努力」の部分を認めてもらえなければ、やはり辛いものです。

だからこそ「あなたがゴールに向かって行動している、努力していることを私はちゃんとわかっている」というメッセージを惜しみなく伝える必要があります。

印刷会社に勤めていた時のことです。

入社4年目の制作担当のCさんが納期の厳しい仕事に悪戦苦闘していました。
「猪俣さん、確認をお願いします」とお願いされ、校正をしながら驚きました。

一ヶ月前よりも格段に修正の量が少なかったからです。

「Cさん、随分頑張っているな・・・。ベテランの先輩が辞めたあとの穴を一生懸命うめようとしているんだな」と感動しました。

「あなたがそうして一生懸命努力しているのを私はわかっている」
そのメッセージを今、伝える時だと思いました。

「Cさん、確認終わったよ」と声をかけると、Cさんが小走りに私のほうに来ます。

ふうっと息をはいて呼吸を整え、心を落ち着かせ、彼女の目を見ながら言いました。

「Cさん、先月の仕事は私の赤ボールペンの修正で、もう原形が見えなくなるくらいだったよね。
でも、今日はその量が4分の1くらいになったよ。かなり少なくなったね。頑張っているね。
Cさんが頑張っているのを見て、忙しいけれど私も頑張ろうと思ったよ」

言いなれないだけにドキドキしましたが、最後までしっかり伝えました。
言い終わるや否や、彼女の顔はパアッと明るくなり、頬はピンク色に!

それは一瞬のことでしたが、とても嬉しそうにしていることが感じられました。

そんなCさんを見て、ようやく「あなたはすごいね」という気持ちを「承認」という表現で伝えることができたことに、心底ほっとしました。

その日の仕事を終えて「これからも頑張ります!」と軽やかにスキップするかのように帰っていくCさんを見送りながら思いました。

「あなたは私たちの職場にこれだけ貢献している。
私はちゃんとそれに気づいている。
そして、あなたの存在が私たちにこんなにいい影響を与えてくれている」

こういうメッセージが、部下の心を動かす最高の褒め言葉になるのだと。

大切なのは、承認は一回すればいいというものではないということです。
一回限りではなく、タイミングよく、何度でも承認し続けることです。

本当の意味で人を育てている人は、意識してそれをしています。

そのあと、Cさんは変わりました。

視線と声にハリが出て、話す時もはきはきと声が大きくなりました。
以前は少し緊張しているかのような強張った表情でしたが、笑顔が多くみられるようになりました。

自分はこの方向で大丈夫と自信がもてたのか、仕事の動作一つとっても、きびきびと振る舞うようになりました。

見るからに作業のスピードも上がり、そのうえ「このページのデザインはこのようにしてみましょうか?」と、提案までするようになりました。

そんなCさんの変化に刺激を受けたのか、若手社員の仕事のスピードも上がり、ミスが目に見えて減りました。

Cさんはそのあとの成長も伸びやかに、2年もしないうちに私の右腕的存在にまでなったのです。

きっとあなたの部下も、あなたからの「承認」を待っています。

部下をよく観察してください。

以前の部下と比べてどのような行動の変化があったでしょうか。
どのような成長があったでしょうか。
意識面ではどのような違いが起きているでしょうか。

それを見てとってくだい。

そして、あなたが部下からどんな影響を受けているのかを伝えてあげてください。

もちろんポジティブな影響をです。

例えば、

「あなたと一緒にいると楽しい」
「あなたと話していると元気がでてくる」
「あなたの仕事ぶりを見ていると、私も頑張ろうと力がわいてくる」

など。

人はどこか深い部分で「自分が他人にどのような影響を与えているのか」知りたがっています。
自分の存在を確認したいと思っていますし、「自分の居場所はここにある」ことを感じたいとも思っています。

部下に「あなたは私にとって、かけがえのない大切な存在なのだ」というメッセージを与え続けてください。

人は、そうしてもらってようやく自分を信じることができ、未経験の分野や変化にチャレンジできるエネルギーに満たされます。

あなたは、いつ、どんな場面で部下を承認しますか?