こんにちは。storyIの猪俣恭子です。

今回も「部下にビジョンを描く重要性」について、お伝えします。

ある飲食店から人事面談を依頼され、飲食店で働くT君のキャリア相談をしていたときのことです。

T君は20代後半で、店内ではリーダー職にありました。
面談中も私の視線をまっすぐ捉えた、その眼差しの輝きに意志の強さを感じ、そんなT君に将来のことを訊きたくなり、質問してみました。

「5年後にはどうなっていたいの?」

「店長になっていたいです」

この答えに驚きました。

他の社員で「店長になりたい」と話す人は、いなかったからです。
T君に興味がわき、続けて訊きました。

「店長になったら、どんな店をつくりたいの?」

「社員が給料に困らない店、安心して働ける店にしたいです」

「そうなんだ。どうしてそういう店にしたいの?」

「ここで働いている人たちって、接客がすごく好きなんです。
お客さんに楽しんでもらえる店づくりをとことん考えてやっています。
仕事にやりがいをもって働いています。

でも、給料がそんなに高くないので生活のことを考えて、結婚するとそれを理由に辞める人が多いんです。
仕事は、好きなのに。

だから、自分が店長になったら、皆が生活に困らずに安心して働ける店にしたい、と思っています」

聞いていて、胸があつくなってきました。

面談の最後に感想を訊くと、彼はこう言いました。

「5年後のことなんて、そんなことを訊かれたことは今までありませんでした。
そういえば、自分でも初めて考えて話したように思います。
いい時間でした」

部下がビジョンを描けるように関わること、それもあなたの仕事です。

それも毎日、毎日。

毎日、一分間でもいいのです。
毎日、一つの質問でもいいのです。

「こういう人でありたい」
「こういうものを持っていたい」
「こんなことをしてみたい」

そんな未来への「思い」をちょっとでも耳にしたら、「それが実現したときのイメージ」が描けるような会話をつくってあげてください。

「その時に、誰と一緒にいる?」
「その人は、どんな表情をしているの?」
「周りの人と、どんな会話をしているの?」
「どんな気分?」
「あなたは、どんな表情をしているの?」
「どこにいるの?」
「そのときに、どんなお祝いを自分にしているの?」

と。

ビジョンを語った瞬間から、それは絵空事ではなく、現実味を帯びてきます。
そうなれば、「やってみよう」という意欲もわきます。

「今、していることは、未来につながっている」という実感も強くなります。

部下のやる気を刺激して、本気とこれからのアクションを部下が自ら引き出せるようにしていきましょう。